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報酬の入金が遅い個人事業主向け。制度を正確に知りたい
ひと言でわかる
報酬の支払期日は受領日から起算して60日以内が上限
クライアントからの報酬振込が翌々月末やさらに先に設定されており、入金までの資金繰りに悩んでいませんか。特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律において、報酬の支払期日は受領日から起算して60日以内が上限と定められています。
フリーランスとして働く個人事業主や一人社長が組織である発注事業者から業務を受託する場合、交渉力や情報収集力の格差から報酬の支払遅延などの不利益を受けやすい構造が存在します。内閣官房が2020年に実施した試算によると、日本では462万人がフリーランスとして働いています。
報酬の支払期日に関するルールを正確に把握することは、安定した事業運営を行うための基礎となります。発注事業者との取引において定められる支払期日の法的な制限や、違反行為に対する救済体制を理解することが重要です。
報酬の支払期日は受領日から起算して60日以内が上限と定められている
特定業務委託事業者が特定受託事業者に報酬を支払う期日は、検査をするかどうかを問わず、発注した物品等を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で定めなければなりません。特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の第4条において、この支払期日の上限が明確に規定されています。
受領日とは、発注事業者が成果物を実際に受け取った日を指します。発注事業者が検収や検査を行う場合であっても、検査の完了日ではなく受領した日を起点として60日以内を計算する必要があります。したがって、検収期間が長期化することを理由に支払期日を受領日から60日を超えて先に延ばす行為は認められません。
契約時に当事者間で支払期日を明確に定めなかった場合、支払期日は物品等を実際に受領した日として法定されます。また、契約書や発注書において受領日から起算して60日を超える期日を取り決めた場合、その期日は無効となり、受領した日から起算して60日を経過した日の前日が法的な支払期日となります。
支払期日の正確な日数計算を行う際には、日付計算ツールなどを活用して受領日からの日数を把握すると便利です。正確な期間管理を行うことで、入金遅延が発生していないかを適切に確認できます。
元委託者から再委託された取引では支払期日は30日以内となる
特定業務委託事業者が元委託者から受けた業務の全部又は一部を特定受託事業者に再委託する場合、再委託に係る報酬の支払期日は元委託支払期日から起算して30日以内のできる限り短い期間内で定めることができます。特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の第4条において、再委託における支払期日の特例として規定されています。
元委託支払期日とは、元委託者から実際に特定業務委託事業者に報酬が支払われた日ではなく、元委託者と特定業務委託事業者との間で取り決められた支払の予定期日を指します。元委託者からの入金が実際に遅れた場合であっても、あらかじめ定められた元委託支払期日から起算して30日以内に特定受託事業者へ支払う必要があります。
再委託の例外規定が適用されるためには、特定業務委託事業者が再委託である旨や必要事項を特定受託事業者にあらかじめ明示していることが条件となります。必要な明示が行われていない場合、再委託の特例は適用されず、通常の原則通り受領日から起算して60日以内が支払期日の上限となります。
取引における契約条件や支払期日のルールについては、フリーランスの入金サイトでも詳しく解説されています。
| 取引の区分 | 支払期日の起算点 | 法定の支払期日上限 |
|---|---|---|
| 直接の業務委託(原則) | 発注した物品等を受領した日 | 受領日から起算して60日以内のできる限り短い期間 |
| 再委託取引(例外適用時) | 元委託者と定めた支払予定期日(元委託支払期日) | 元委託支払期日から起算して30日以内のできる限り短い期間 |
| 支払期日を取り決めなかった場合 | 発注した物品等を受領した日 | 物品等を実際に受領した日当日 |
| 受領日から60日を超えて定めた場合 | 発注した物品等を受領した日 | 受領した日から起算して60日を経過した日の前日 |
どのような事業者が法律の規制対象となるのか
特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の対象となる事業者は、発注側である特定業務委託事業者と受注側である特定受託事業者です。特定受託事業者とは、業務委託の相手方である事業者であって従業員を使用しない個人事業者や一人社長の法人を指します。特定受託業務従事者とは、特定受託事業者である個人および特定受託事業者である法人の代表者を指します。
特定業務委託事業者とは、特定受託事業者に業務委託をする事業者であって従業員を使用する事業者を指します。従業員とは、週所定労働20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれる者を想定しています。短時間や短期間の一時的に雇用される者は従業員に含まれないため、一時的な雇用者がいる場合であっても従業員を使用しない事業者として扱われます。
業務委託とは、事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造、情報成果物の作成又は役務の提供を委託することを指します。事業者間で行われる取引が対象となるため、一般の消費者が個人のカメラマンに家族写真の撮影を依頼するような消費者取引や、出版社がカメラマンと労働契約を結んで雇用するような労働法の対象取引は本法律の適用対象外となります。
従業員を使用していない事業者が特定受託事業者に業務委託を行う場合であっても、取引条件の書面等による明示義務は適用されます。発注者が個人事業者であっても組織であっても、業務委託を行う際には書面や電磁的方法による条件明示が求められます。
発注事業者に課される取引条件の明示義務と禁止事項
特定業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合、直ちに給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を書面又は電磁的方法により明示しなければなりません。特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の第3条において、口頭発注によるトラブルを防ぐための明示義務が課されています。
電磁的方法には電子メールやSNSが含まれます。特定業務委託事業者が電磁的方法によって取引条件を明示した場合、特定受託事業者から書面の交付を求められたときは遅滞なく書面を交付しなければなりません。また、発注時点で内容が定められない正当な理由がある事項については、内容が確定した後に直ちに追加で明示する必要があります。
特定受託事業者との継続的な業務委託において、特定業務委託事業者は不当な行為を行うことが禁止されています。第5条では、特定受託事業者の責めに帰すべき事由がない受領拒否、報酬の減額、返品、やり直しや内容変更の強制が禁止されています。減額についてあらかじめ合意があった場合であっても、受託者に責任がない減額は法律違反となります。
通常支払われる対価に比べて著しく低い報酬の額を不当に定める行為や、正当な理由なく指定する物の購入や役務の利用を強制する行為、自己のために経済上の利益を提供させる行為も禁止されています。適正な報酬額を算出する際には、フリーランス単価計算ツールなどを活用して適切な取引条件を確認することが役立ちます。
| 条文番号 | 義務・禁止事項の項目 | 具体的な内容 |
|---|---|---|
| 第3条 | 取引条件の明示義務 | 業務委託時に給付内容、報酬額、支払期日等を発注後直ちに書面または電磁的方法で明示する義務 |
| 第4条 | 期日における報酬支払義務 | 発注した物品等を受領した日から起算して60日以内の期日を定めて報酬を支払う義務 |
| 第5条 | 受領拒否・減額等の禁止 | 受託者の責めに帰すべき事由のない受領拒否、減額、返品、やり直しの強制、著しく低い報酬設定の禁止 |
| 第12条 | 募集情報の的確表示義務 | 広告等による募集情報において虚偽表示や誤解を生じさせる表示を禁じ正確かつ最新に保つ義務 |
| 第13条 | 育児介護等と業務の両立配慮 | 継続的業務委託において受託者からの申出に応じ育児や介護等と両立できるよう配慮する義務 |
| 第14条 | ハラスメント対策の体制整備 | ハラスメント相談窓口の設置や体制整備を行い相談を理由とする不利益取扱いを禁止する義務 |
| 第16条 | 中途解除等の事前予告義務 | 継続的業務委託を中途解除または不更新とする場合少なくとも30日前までに予告する義務 |
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報酬の支払遅延や取引トラブルが発生したときの相談先
特定業務委託事業者から報酬の支払遅延や不当な減額などの被害を受けた場合、フリーランス・トラブル110番に相談することができます。フリーランス・トラブル110番は、厚生労働省、中小企業庁、公正取引委員会が2020年11月に設置した相談窓口であり、弁護士による電話やメール、対面、オンラインでの相談対応や和解あっせんを実施しています。
内閣官房、公正取引委員会、厚生労働省、中小企業庁が2021年に共同で実施したアンケート調査によると、直近3年間の取引で依頼者から納得できない行為を受けた経験があるフリーランスは39.2%存在します。また、取引条件や業務内容が示されていない、または不十分であると回答した割合は44.4%(示されていない割合が17.5%、明記が不十分である割合が26.9%)に達しています。
違反行為を受けた特定受託事業者は、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省に直接またはフリーランス・トラブル110番を経由して申告を行うことが可能です。行政機関は違反行為を行った事業者に対し、報告徴収、立入検査、指導、助言、勧告、命令、公表などの措置を実施します。命令違反や検査拒否等に対しては50万円以下の罰金が科されます。
特定受託事業者が行政機関の窓口に申告を行ったことを理由として、発注事業者が取引停止や報酬減額などの不利益な取扱いを行うことは法律により禁じられています。不当な取引条件に直面した場合は、記録を残した上で公的な窓口への相談を検討することが重要です。
取引条件の明示と報酬管理を確実に行うための実務対応
支払遅延や取引上のトラブルを未然に防止するためには、発注時に受領する取引条件の明示内容を詳細に確認し、正確な請求処理を行う実務体制を整えることが大切です。書面や電子メールで交付された給付内容、報酬額、支払期日、納品場所などの条件を保管し、受領日から支払日までの日数を把握する必要があります。
請求書を作成する際には、発注書に記載された報酬額や支払期日と一致しているかを照合することが不可欠です。請求書の記載事項に不備があると確認作業に時間がかかり、支払期日の管理に影響を与える可能性があるため、請求書の書き方に沿って正確な書類を作成することが求められます。
消費税額や源泉徴収税額などの計算を正確に行うためには、請求書計算ツールを活用して計算誤りを防ぐことが有効です。正確な請求書を発行し、受領日から起算して60日以内の支払期日が遵守されているかを継続的に確認することで、健全な資金管理を維持できます。
事業資金の調達手段や資金繰りの改善方法を検討している場合には、フリーランス向け金融サービスなどの情報も参考になります。
よくある質問
報酬の支払期日は最長で何日まで設定できますか?
特定業務委託事業者が設定できる報酬の支払期日は、発注した物品等を受領した日から起算して60日以内が上限となります。特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の第4条において、検査の有無を問わず受領日から60日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定めることが義務付けられています。
契約において受領日から起算して60日を超える期日を定めた場合であっても、その取り決めは無効となり、受領した日から起算して60日を経過した日の前日が法的な支払期日となります。ただし、元委託者から再委託を受けた取引で所定の明示がある場合は、元委託支払期日から起算して30日以内が上限となります。
発注書がメールやSNSで届いた場合は有効ですか?
電子メールやSNSなどの電磁的方法による取引条件の明示は有効です。特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の第3条により、業務委託事業者は書面の交付だけでなく電磁的方法による明示を行うことが認められています。
電磁的方法により明示が行われた場合であっても、特定受託事業者が書面の交付を求めたときは、業務委託事業者は遅滞なく書面を交付しなければなりません。取引内容に関するトラブルを防ぐため、受領したメールやメッセージの記録を保存しておくことが推奨されます。
クライアントから一方的に報酬を減額されたらどうなりますか?
特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないにもかかわらず発注事業者が一方的に報酬を減額する行為は法律違反となります。特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の第5条において、減額行為があらかじめ合意されていた場合であっても受託者に責任がなければ禁止されています。
不当な減額を受けた場合、公正取引委員会や中小企業庁、厚生労働省などの行政窓口やフリーランス・トラブル110番に相談することができます。違反が認められた発注事業者に対しては、行政機関から指導や勧告、命令などの措置が行われます。
継続案件の契約を突然打ち切られた場合のルールはありますか?
一定期間以上の継続的業務委託を中途解除または更新しない場合、特定業務委託事業者は少なくとも30日前までに予告しなければなりません。特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の第16条において事前予告が義務付けられています。
予告が行われた日から契約満了日までの間に特定受託事業者が解除や不更新の理由の開示を請求した場合、発注事業者はその理由を開示しなければなりません。ただし、災害により実施が困難な場合や受託者に契約不履行がある場合など、所定の例外事由がある場合は予告が不要とされます。
フリーランス・トラブル110番ではどのような支援を受けられますか?
フリーランス・トラブル110番では、弁護士による電話やメール、対面、オンラインでの無料相談や和解あっせんの支援を受けることができます。発注事業者との間の報酬未払い、支払遅延、不当な減額、契約解除などのトラブル全般について相談が可能です。
相談を通じて特定業務委託事業者の法律違反が疑われる場合には、行政機関への申告に関する案内を受けることもできます。さらに、法律の適用対象外となる取引に関するトラブルについても相談対応や和解あっせんのサポートが行われています。
法律の規定を理解して健全な取引関係を維持する
フリーランスや個人事業主が安心して業務に従事するためには、報酬の支払期日は受領日から起算して60日以内が上限であるという基本ルールを正確に理解しておくことが不可欠です。受領日を起点とした期日管理を徹底することで、不当な支払遅延の発生を抑止できます。
取引条件の明示義務や禁止事項などの法制度が整備されたことにより、受託者側の権利保護と取引環境の適正化が進められています。万が一トラブルが発生した際には、契約書や発注メールなどの証拠を保管した上で公的な相談窓口を活用することが有効な解決手段となります。
適正な取引条件の合意と確実な請求管理を日頃から行い、事業の継続性と安定した収益基盤を確立していきましょう。
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