国民年金保険料の免除・納付猶予制度の申請条件と年金額への影響

所得が減少して国民年金の納付が困難な個人事業主や退職者向け。国民年金の免除要件と将来もらえる年金額への影響を知りたい

著者: アキスケ

ひと言でわかる

国民年金保険料は前年所得が一定基準以下なら全額または一部免除が認められ、免除期間も老齢基礎年金の受給資格期間および年金額に一部反映される

収入の減少や失業等によって国民年金保険料の納付が困難になった場合、未納のまま放置すると将来の年金や万が一の保障を受けられなくなるリスクがあります。国民年金保険料は前年所得が一定基準以下なら全額または一部免除が認められ、免除期間も老齢基礎年金の受給資格期間および年金額に一部反映されます。

公的なセーフティネットとして用意されている国民年金保険料の免除制度や納付猶予制度を利用することで、経済的な負担を軽減しながら年金の受給権を確保できます。申請の手続きを行わずに未納となっている期間は年金額にも受給資格期間にも反映されませんが、免除や納付猶予の承認を受けることで将来の保障を維持できます。

日本年金機構が定める免除制度および納付猶予制度の承認基準、免除区分に応じた将来の年金額への反映割合、失業や事業廃止に伴う特例免除の要件、具体的な申請手続きの要点を確認して適切な手続きを行うことが重要です。

国民年金保険料の免除制度と納付猶予制度の違いは何か

国民年金保険料の免除制度と納付猶予制度の主な違いは、対象年齢、所得審査の対象となる世帯員の範囲、および老齢基礎年金の年金額への反映の有無にあります。免除制度は全年齢の被保険者を対象として本人・配偶者・世帯主の所得を審査し承認されれば年金額にも一部反映されますが、納付猶予制度は20歳以上50歳未満の方を対象として本人・配偶者の所得のみを審査し年金額には反映されません。

保険料免除制度とは、本人・配偶者・世帯主の前年所得が一定額以下の場合や失業した場合など、保険料を納付することが経済的に困難な場合に、申請書を提出して承認されると保険料の納付が免除される制度です。免除される額には、全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除の4種類があります。

保険料納付猶予制度とは、20歳以上50歳未満の方で、本人・配偶者の前年所得が一定額以下の場合に、申請書を提出して承認されると保険料の納付が猶予される制度です。納付猶予制度では世帯主の前年所得は審査対象とならないため、同居する世帯主の所得基準にかかわらず本人と配偶者の所得要件を満たせば承認を受けられます。

免除制度や納付猶予制度を申請できる期間は、保険料の納付期限から2年を経過していない期間(申請時点から2年1カ月前までの期間)です。納付期限を過ぎた過去の保険料であっても、2年以内であればさかのぼって免除や猶予の申請を行うことができます。

なお、学生の方は学生納付特例制度、生活保護の生活扶助を受けている方や障害年金を受けている方は法定免除制度、出産を予定している方や出産した方は産前産後期間の免除制度の対象となるため、通常の免除制度や納付猶予制度の対象外となります。また、国民年金に任意加入をしている方は免除・納付猶予の申請ができません。

免除や納付猶予を受けると将来の年金額はどうなるか

国民年金保険料の全額免除を受けた期間は、保険料を全額納付した場合の年金額の2分の1(税金分)が将来の老齢基礎年金として受け取れます。納付猶予を受けた期間は老齢基礎年金を受け取るために必要な受給資格期間には算入されますが、年金額の計算には反映されません。

免除の区分に応じて減額された保険料を納付した場合、将来受け取る老齢基礎年金の年金額には所定の割合が反映されます。令和8年度における各免除区分の納付保険料額と年金額への反映割合は次の通りです。全額免除の場合は納付額が0円で年金額の2分の1(平成21年3月分までは3分の1)が反映されます。4分の3免除の場合は納める保険料額が4,480円で年金額の8分の5(平成21年3月分までは2分の1)が反映されます。半額免除の場合は納める保険料額が8,960円で年金額の8分の6(平成21年3月分までは3分の2)が反映されます。4分の1免除の場合は納める保険料額が13,440円で年金額の8分の7(平成21年3月分までは6分の5)が反映されます。一部免除の承認を受けた期間については、減額された保険料を納付している必要があります。

昭和31年4月2日以後生まれの方が1年で受け取れる年金額のめやすとして、老齢基礎年金を40年納付した場合は847,300円となります。これに対し、40年全額免除となった場合(国庫負担2分の1で算出した場合)は423,650円となります。また、障害基礎年金は1級が1,059,125円、2級が847,300円であり、遺族基礎年金は子(1人)がある配偶者の場合で1,091,100円となっています。

免除や納付猶予の手続きを行わず未納のままにした場合は、年金額への反映がないだけでなく、老齢基礎年金や障害基礎年金、遺族基礎年金の受給資格期間にも算入されません。各区分における受給資格期間や年金額への反映状況の違いは以下の表の通りです。

区分 老齢基礎年金の受給資格期間への算入 老齢基礎年金の年金額への反映 障害基礎年金、遺族基礎年金の受給資格期間への算入
納付 あり あり あり
全額免除 あり あり(2分の1) あり
一部免除(4分の3・半額・4分の1) あり あり(8分の5〜8分の7) あり
納付猶予 あり なし あり
未納 なし なし なし

※障害基礎年金および遺族基礎年金を受け取るためには一定の受給要件を満たす必要があります。

※一部免除の承認を受けている期間は、減額された保険料を納付している必要があります。

免除や納付猶予が承認される所得基準はいくらか

国民年金保険料の免除や納付猶予を受けるための所得基準は、前年所得が法令に定められた計算式の金額の範囲内であることです。全額免除および納付猶予制度の所得基準は「(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円」の計算式で算出されます。

一部免除の所得基準は、全額免除よりも段階的に基準額が高く設定されています。4分の3免除は「88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等」、半額免除は「128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等」、4分の1免除は「168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等」の範囲内であることが条件です。扶養親族の有無や支払った国民健康保険などの社会保険料控除額等に応じて、基準となる上限額が加算されます。

免除区分ごとの所得基準の計算式一覧は次の通りです。

免除・猶予の区分 前年所得の基準計算式 審査対象となる世帯員
全額免除 (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円 本人・配偶者・世帯主
4分の3免除 88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 本人・配偶者・世帯主
半額免除 128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 本人・配偶者・世帯主
4分の1免除 168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 本人・配偶者・世帯主
納付猶予制度 (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円 本人・配偶者

所得基準の判定における留意点として、地方税法に定める障害者、寡婦またはひとり親の場合には基準額が変わります。また、震災・風水害等で被災した方、特別障害給付金を受けている方、生活保護法による生活扶助以外の扶助やその他の援助で厚生労働省令で定めるものを受けている方については、前年所得に関係なく免除や納付猶予が承認される場合があります。

配偶者からの暴力により配偶者と住所が異なる方、矯正施設に収容されている方、留置施設に留置されていた方についても特例免除等の申請手続きが用意されています。

未納のまま放置するとどのようなリスクが生じるか

国民年金保険料を未納のまま放置すると、病気やけがによる障害や死亡といった不測の事態が発生した際に障害基礎年金や遺族基礎年金が支給されず、将来の老齢基礎年金も受け取れなくなるリスクがあります。不慮の事故や病気が発生してから過去にさかのぼって申請を行っても、障害基礎年金の保険料納付要件には算入されません。

障害基礎年金や遺族基礎年金が支給されないケースとして、障害の場合は「初診日の属する月」、死亡の場合は「死亡日の属する月」の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が3分の2未満である場合が挙げられます。また、「初診日の属する月」または「死亡日の属する月」の前々月までの1年間に保険料の未納がある場合も年金は支給されません。ここでいう初診日とは、障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日のことを指します。

将来の老齢基礎年金を受け取るためには、保険料納付済期間(厚生年金保険や共済組合等の加入期間を含む)と保険料免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上必要です。未納期間は受給資格期間としてカウントされないため、通算して10年に満たない場合は老齢基礎年金を一切受け取ることができなくなります。

免除や納付猶予の承認を受けた期間の保険料については、追納制度を利用することで10年以内であれば申し出により後から納付することができます。追納を行うことで、将来受け取る老齢基礎年金の受給額を満額に近づけることが可能です。経済的に納付が困難な場合でも、未納のまま放置せず免除や納付猶予の手続きを行うことが重要です。

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失業や倒産や事業廃止のときは特例免除を受けられるか

失業・倒産・事業の廃止などの事実を確認できたときは、失業等した方の前年所得にかかわらず国民年金保険料の免除や納付猶予を受けられる特例があります。前年の所得が高く通常の所得基準を超える場合であっても、特例免除を利用することで保険料の免除や猶予の承認を受けることが可能です。

特例免除を受けるためには、失業等の事実を確認できる公的な書類の提出が必要です。過去に同一の失業等の事由により免除・納付猶予を申請し、失業等の事実が確認できる書類を添付したことがある場合は、あらためて添付する必要はありません。

雇用保険の被保険者であった方の場合は、勤務先から交付される「雇用保険被保険者離職票」のコピーや、ハローワークから交付される「雇用保険受給資格者証」、「雇用保険受給資格通知」のコピーなどを提出します。事業の廃止(廃業)または休止の届出を行っている方の場合は、厚生労働省が実施する総合支援資金貸付の貸付決定通知書の写しおよびその申請時の添付書類の写しが対象となります。

上記の書類を用意できない個人事業主等の場合は、別途失業の状態にあることの申し立てを書式にて行うことで、以下の書類によって失業等の事実を確認できます。

  • 履歴事項全部証明書または閉鎖事項全部証明書(法務局ホームページからオンラインによる交付請求が可能)
  • 税務署等への異動届出書、個人事業の開廃業等届出書または事業廃止届出書の写し
  • 保健所への廃止届出書の控(受付印のあるものに限る)
  • その他、公的機関が交付する証明書等であって失業の事実が確認できる書類

国民年金保険料の免除や納付猶予はどのように申請するか

国民年金保険料の免除・納付猶予の申請手続きは、電子申請、または年金事務所や住所地の市区町村役場への書類提出(窓口持参・郵送)によって行います。提出に当たっては手続きの簡素化および迅速化が見込める電子申請の利用が案内されています。

紙で申請する場合の申請先は、住所地の市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口、またはお近くの年金事務所です。申請用紙(A4版)は日本年金機構のホームページからダウンロードできるほか、「ねんきんネット」のIDをお持ちであれば「ねんきんネット」の画面上で申請書を作成することもできます。申請書に記入した内容を確認するためのツールとして「セルフチェックシート(国民年金保険料 免除・納付猶予申請用)」も提供されています。

申請に必要な添付書類は、基礎年金番号により手続きを行うか、マイナンバー(個人番号)により手続きを行うかによって異なります。基礎年金番号で手続きをする場合は「基礎年金番号通知書」または「年金手帳等の基礎年金番号を明らかにすることができる書類」を添付します。マイナンバーで手続きをする場合は「マイナンバーカード(個人番号カード)」を提示・添付します。マイナンバーカードをお持ちでない場合は、マイナンバーが確認できる書類(氏名・住所等が住民票の住所と一致する通知カード、または個人番号の表示がある住民票の写し)と、身元(実存)確認書類(運転免許証、パスポート、在留カード等)の2点が必要です。

前年所得を証明する書類の添付は原則不要です。免除・納付猶予の申請を行うと、市区町村長に対して申請者本人、配偶者、世帯主の所得状況の証明を求め、その内容を年金事務所長に提出することに同意した扱いとなります。ただし、申請者本人・配偶者・世帯主の中に確定申告や年末調整を行っていない方がいる場合は、市(区)役所・町村役場の税務担当窓口にて住民税(市区町村民税)の申告を行ったうえで申請書を提出する必要があります。

また、申請時点の住所と申請する年度分の直前の1月1日時点(申請日が1月から6月までの間である場合は前年の1月1日時点)において海外に居住していた場合は、申請書の特記事項欄に国名および転入日を記入する必要があります。

翌年度以降の継続審査と届出の注意点は何か

国民年金保険料の免除・納付猶予の申請は原則として毎年度必要ですが、全額免除または納付猶予の承認を受けた方が翌年度以降も申請を希望する場合は「継続審査」によって自動的に審査を受けることができます。失業等による特例免除承認者については翌年度もあらためて申請が必要です。

継続審査を希望した方のうち、納付猶予を承認された方が全額免除の審査を希望した場合は、翌年度において「1. 全額免除」「2. 納付猶予」の順に審査が行われます。これにより、まず全額免除の所得基準で審査され、該当しない場合に納付猶予の基準で判定されます。

継続審査を希望している方で、令和元年7月1日以降に婚姻によって配偶者を有するに至った場合や、離婚・死亡によって配偶者を有しなくなった場合は、「国民年金保険料免除・納付猶予継続申請者の配偶者状況変更届」の提出が必要です。配偶者の有無は審査対象となる所得の範囲に直接影響するため、世帯状況に変更があった際は速やかな届出が求められます。

一部免除(4分の3免除、半額免除、4分の1免除)の承認を受けた場合は継続審査の対象とならないため、翌年度も引き続き免除を希望する場合は毎年度の申請手続きを行う必要があります。一部免除期間は減額された保険料を納付期日までに納めなければ未納扱いとなる点にも注意が必要です。

よくある質問

国民年金の免除を申請すると将来もらえる年金は減りますか?

全額免除を受けた期間については、保険料を全額納付した場合の年金額の2分の1(平成21年3月分までは3分の1)が将来の老齢基礎年金として支給されるため、満額納付した場合と比べて年金額は低額になります。納付猶予の期間は受給資格期間には算入されますが年金額には反映されません。

4分の3免除では全額納付時の8分の5、半額免除では8分の6、4分の1免除では8分の7の割合で年金額に反映されます。将来の年金額を満額に近づけたい場合は、承認を受けた期間から10年以内であれば保険料の追納を行うことが可能です。

免除された国民年金保険料は後から支払うことができますか?

免除や納付猶予の承認を受けた期間の国民年金保険料は、10年以内であれば申し出により追納することができます。追納を行うことで、将来受け取る老齢基礎年金の受給額を満額に近づけることが可能です。

なお、未納のまま放置した場合は追納制度を利用できず、過去にさかのぼって免除を申請できる期間も納付期限から2年を経過していない期間(申請時点から2年1カ月前まで)に限られます。

個人事業主が廃業した場合は所得が多くても免除されますか?

個人事業の廃止や休止の事実を確認できる書類を提出することで、前年所得にかかわらず免除や納付猶予を受けられる特例免除制度があります。前年の事業所得が基準額を超えている場合であっても、廃業の証明書類を添えて申請すれば審査の対象となります。

廃業時の確認書類としては、厚生労働省が実施する総合支援資金貸付の貸付決定通知書の写しや、税務署等への異動届出書、個人事業の開廃業等届出書または事業廃止届出書の写し、保健所への廃止届出書の控、履歴事項全部証明書・閉鎖事項全部証明書などが利用できます。

納付猶予制度と全額免除制度の違いは何ですか?

納付猶予制度と全額免除制度の主な違いは、対象年齢、所得審査の対象者、および老齢基礎年金額への反映の有無です。全額免除は全年齢が対象で本人・配偶者・世帯主の所得が審査され年金額の2分の1が将来支給されますが、納付猶予は20歳以上50歳未満が対象で本人・配偶者のみが審査され年金額には反映されません。

どちらの制度も老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金の受給資格期間には算入されます。同居する世帯主の所得が高く全額免除の基準を満たさない場合でも、20歳以上50歳未満であれば納付猶予制度の承認を受けられる場合があります。

免除の申請は毎年行わなければなりませんか?

免除や納付猶予の申請は原則として毎年度必要ですが、全額免除または納付猶予の承認時に継続申請を希望した場合は翌年度以降も自動的に継続審査が行われます。ただし、失業等による特例免除承認者や一部免除の承認者は翌年度も申請が必要です。

また、継続審査を希望している方であっても、婚姻により配偶者を有するに至った場合や離婚・死亡により配偶者を有しなくなった場合は「国民年金保険料免除・納付猶予継続申請者の配偶者状況変更届」の提出が必要となります。

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