退職金の税金計算と退職所得控除の求め方
退職金を受け取る予定の会社員・役員向け。退職金からいくら税金が引かれるか知りたい
ひと言でわかる
退職金は退職所得控除を引いた残額の2分の1に課税される優遇措置があり、勤続年数によって控除額が決まる
退職金の支給を控えて手取り額や税金の負担を把握したいと考えている会社員や役員の方は多いです。退職金は退職所得控除を引いた残額の2分の1に課税される優遇措置があり、勤続年数によって控除額が決まります。
国税庁のタックスアンサー「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」(令和7年4月1日現在法令等)によると、退職所得に対する所得税は、原則として給与所得などの他の所得と合算せず、分離して税額を計算する分離課税が適用されます。退職手当等は長年の勤労に対する報償や退職後の生活を支える原資となる性質を持つため、税負担を緩和する特別な計算体系が法律上定められています。
課税対象となる退職所得の金額を算出する際には、勤続年数に応じて算出される退職所得控除額を収入金額から差し引き、その残額に2分の1を乗じる計算式が原則として用いられます。この退職所得控除額は勤続年数が20年以下であるか20年を超えるかによって計算式が分かれており、長期勤務者ほど手厚い控除が受けられる仕組みになっています。
勤務先へ「退職所得の受給に関する申告書」を提出しているかどうかによって、支払時の源泉徴収税率や退職後の確定申告の要否が分かれます。また、勤続年数が5年以下の役員等や従業員が受け取る退職手当等については2分の1計算の適用が除外または制限されるなど、受給者の状況に応じた個別の適用要件を正確に把握しておく必要があります。
退職金の税金はどのように計算されるのか
退職所得の金額は、原則として、源泉徴収される前の収入金額から退職所得控除額を差し引いた残額に2分の1を乗じて計算します。退職所得は給与所得などの経常的な収入とは性質が異なり、長期間の勤労の対価が一時に支払われるものであるため、税負担を軽減するために課税対象額を半分にする2分の1課税が適用されます。
退職所得の計算の基礎となる収入金額とは、所得税や復興特別所得税が源泉徴収される前の総支給額を指します。確定給付企業年金規約に基づいて支給される退職一時金などで、従業員自身が負担した保険料または掛金がある場合には、その支給額から従業員が負担した保険料または掛金の金額を差し引いた残額を退職所得の収入金額とします。過去に自己負担した掛金部分を収入金額から除外することにより、二重課税を防ぐ規定となっています。
退職所得に対する所得税額は、原則として他の所得と分離して計算する分離課税が適用されます。給与所得や事業所得などの総合課税の対象となる所得と合算されることはないため、他の所得が高い場合であっても退職所得の税率が不当に跳ね上がることはありません。なお、平成25年1月1日から令和19年12月31日までの間に支払を受ける退職手当等については、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法に基づき、所得税とともに復興特別所得税が課されます。
退職金から差し引かれる税金の目安を確認したい場合は、退職所得の計算ツールで試算することができます。また、給与所得を含めた所得税全体の計算体系については所得税計算ツールも役立ちます。
| 区分 | 計算式 | 備考 |
|---|---|---|
| 原則的な退職所得の金額 | (収入金額 - 退職所得控除額) × 1 / 2 | 源泉徴収される前の収入金額から退職所得控除額を引いた残額の2分の1が課税対象になります。 |
| 従業員自身が掛金を負担していた場合 | (支給額 - 従業員負担の保険料・掛金 - 退職所得控除額) × 1 / 2 | 確定給付企業年金規約に基づく退職一時金などで従業員本人が負担した掛金を差し引きます。 |
退職所得控除額は勤続年数でいくらになるのか
退職所得控除額は、勤続年数が20年以下の場合は1年あたり40万円、勤続年数が20年を超える場合は800万円に20年を超えた年数1年あたり70万円を加算して計算します。勤続年数が20年を超えると1年あたりの控除加算額が40万円から70万円へと拡大するため、長年勤務した受給者ほど税制上の恩恵が大きくなる構造になっています。
勤続年数の計算においては、1年未満の端数がある場合はその端数を1年に切り上げて計算します。例えば勤続期間が10年2か月の場合、端数の2か月は1年に切り上げられるため、計算上の勤続年数は11年となります。また、計算した勤続年数による控除額が80万円に満たない場合には、退職所得控除額は一律で80万円と定められており、勤続1年の場合でも最低80万円の控除枠が確保されます。
障害者になったことが直接の原因で退職した場合の退職所得控除額は、上記の方法により計算した額に、100万円を加えた金額となります。身体や精神の障害を理由とする非自発的な退職に対しては、生活保障の観点から控除枠を上乗せする配慮がなされています。ただし、前年以前に退職金を受け取ったことがあるときまたは同一年中に2か所以上から退職金を受け取るときなどは、控除額の計算が異なることがあります。
国税庁のタックスアンサー No.1420(令和7年4月1日現在法令等)に示されている具体的な計算例は次の通りです。
勤続年数が10年2か月の人の場合の退職所得控除額は、端数の2か月を1年に切り上げて勤続年数を11年とし、40万円×11年=440万円となります。
勤続年数が30年の人の場合の退職所得控除額は、800万円+70万円×(勤続年数-20年)=800万円+70万円×10年=1,500万円となります。
| 勤続年数(A) | 退職所得控除額の計算式 | 最低保証・加算措置 |
|---|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × A | 計算額が80万円に満たない場合には、80万円 |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 × (A - 20年) | 障害者となったことが直接の原因で退職した場合は計算額に100万円を加算 |
勤続年数が5年以下の役員や従業員にはどのような制限があるのか
勤続年数が5年以下である役員等や従業員が退職手当等の支給を受ける場合、通常の2分の1を乗じる計算方法が制限される規定が存在します。短期間の勤務で多額の退職手当を受け取ることによる税負担の軽減を制限するために設けられた規定です。
特定役員退職手当等に該当する場合、退職金の額から退職所得控除額を差し引いた額がそのまま退職所得の金額になります。この特定役員退職手当等については、通常の計算式にある2分の1計算の適用はありません。特定役員退職手当等とは、役員等勤続年数が5年以下である人が支払を受ける退職手当等のうち、その役員等勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けるものを指します。
役員等勤続年数とは、退職金等に係る勤続期間のうち、役員等として勤務した期間の年数をいい、1年未満の端数がある場合はその端数を1年に切り上げます。役員等には、法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事および清算人ならびにこれら以外の者で法人の経営に従事している一定の者のほか、国会議員および地方公共団体の議会の議員、国家公務員および地方公務員が含まれます。
役員等以外の者として勤務した期間により計算した勤続年数が5年以下である短期勤続者が受け取る短期退職手当等の場合、退職金の額から退職所得控除額を差し引いた額のうち300万円を超える部分については、2分の1計算の適用がありません。300万円以下の部分については2分の1計算が適用されます。短期勤続年数の計算において役員等として勤務した期間がある場合は、その期間を含めて計算します。
役員等の場合は勤続年数5年以下であれば控除後の金額全額に対して課税され、一般従業員等の短期勤続者の場合は控除後の金額のうち300万円以下の部分にのみ2分の1計算が認められ、300万円を超える部分は全額が退職所得に算入される仕組みとなっています。
| 区分 | 対象となる勤続年数 | 退職所得の計算方法 |
|---|---|---|
| 特定役員退職手当等 | 役員等勤続年数が5年以下 | 退職金の額 - 退職所得控除額(2分の1計算の適用なし) |
| 短期退職手当等 | 役員等以外の勤続年数が5年以下(特定役員退職手当等を除く) | 300万円以下の部分は2分の1計算を適用し、300万円を超える部分は全額を算入 |
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どのような支給金が退職所得に該当するのか
退職所得とは、退職により勤務先から受ける退職手当などの所得をいい、退職金のほかにも法律や規約に基づいて支給される様々な一時金が含まれます。退職という身分の変動に起因して支払われる金銭に対しては、退職所得控除や分離課税といった税制上の優遇措置が適用されます。
社会保険制度などにより退職に基因して支給される一時金は退職所得とみなされます。さらに、確定拠出年金法に規定する企業型年金規約または個人型年金規約に基づいて老齢給付金として支給される一時金なども退職所得とみなされます。確定拠出年金の老齢給付金を一時金として受給する場合の詳細や仕組みについては、iDeCoの解説でも制度の背景を確認できます。
また、労働法規に基づいて支払われる補償や救済金の一部も退職所得に該当します。労働基準法第20条の規定により支払われる解雇予告手当や、賃金の支払の確保等に関する法律第7条の規定により退職した労働者が弁済を受ける未払賃金も退職所得に該当します。解雇予告手当や倒産等による未払賃金の弁済であっても、給与所得ではなく退職所得として取り扱われるため、退職所得控除を適用した計算が行われます。
これらの支給金を受け取った場合、通常の給与所得とは異なり、勤務年数に応じた退職所得控除の適用および原則2分の1課税の計算式を用いて所得税額が算出されます。
退職金を受け取るとき確定申告は必要なのか
退職金を受け取る際に「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出している場合、原則として確定申告を行う必要はありません。勤務先である支払者が退職所得控除を適用して所得税額および復興特別所得税額を正確に計算し、退職手当等の支払の際に適正な金額を源泉徴収するため、課税関係がその場で完結するためです。
「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出していない人の場合は、退職金等の支払金額の20.42パーセントの所得税額および復興特別所得税額が一律で源泉徴収されます。この場合、受給者本人が確定申告を行うことにより、勤続年数に応じた退職所得控除を適用し、過納となった所得税額および復興特別所得税額の精算(還付申告)をします。確定申告の全体の流れについては確定申告の手引きで確認できます。
「退職所得の受給に関する申告書」を提出している人であっても、医療費控除や寄附金控除の適用を受けるなどの理由で確定申告書を提出する場合は、確定申告書に退職所得の金額を記載する必要があります。医療費に関する控除の手続きは医療費控除の案内、寄附金控除についてはふるさと納税の仕組みを参照してください。
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すると、画面の案内に沿って金額等を入力することによりご自宅等で確定申告書等の作成および提出ができます。必要な付表や明細書も、画面入力を行うことで自動的に作成されるため、申告書作成手続きを円滑に進めることが可能です。
退職所得の手続きと根拠法令には何があるのか
退職所得に関する課税および源泉徴収の手続きは、所得税法をはじめとする複数の法令および通達によって明確に規定されています。国税庁のタックスアンサー No.1420(令和7年4月1日現在法令等)では、制度の根拠となる法令や関連する税務手続きが整理されています。
所得税法における主な根拠条文としては、第30条(退職所得の定義および計算)、第31条(退職所得控除額の計算)、第120条から第122条(申告手続き)、第199条および第201条から第203条(源泉徴収義務および源泉徴収税額の計算)が挙げられます。また、施行令第72条、租税特別措置法第29条の4、所得税基本通達30-3、30-5、復興財確法第28条などが適用基準を細かく定めています。
国税庁では、退職所得に関連する情報としてタックスアンサーに以下の関連コードを設定して案内を行っています。
- コード2725:退職所得となるもの
- コード2728:退職所得の収入金額の収入すべき時期
- コード2732:退職金に対する源泉徴収
- コード2735:同じ年に2か所以上から退職手当等が支払われるとき
退職金を受け取る手続きとしては「[手続名]退職所得の受給に関する申告(退職所得申告)」が定められており、確定申告を行う際には「申告書・申告書付表と税額計算書等 一覧(申告所得税)」や「別紙 退職所得の源泉徴収税額の速算表」などの各種様式および手引きが国税庁から提供されています。税務上の不明点や個別具体的な相談については、国税局電話相談センター等の相談窓口が設置されています。
よくある質問
勤続年数に1年未満の端数がある場合はどのように計算しますか?
勤続年数に1年未満の端数がある場合は、その端数を1年に切り上げて計算します。
例えば勤続年数が10年2か月の人の場合、端数の2か月は1年に切り上げられて計算上の勤続年数は11年になります。この場合、勤続年数20年以下の計算式が適用され、退職所得控除額は40万円×11年=440万円となります。
なお、計算した勤続年数による控除額が80万円に満たない場合には、退職所得控除額は80万円と定められています。
退職所得の受給に関する申告書を提出しないとどうなりますか?
「退職所得の受給に関する申告書」を提出しない場合、退職金等の支払金額の20.42パーセントの所得税額および復興特別所得税額が一律で源泉徴収されます。
退職所得控除が適用されないまま一律の税率で天引きされるため、本来納めるべき税額よりも多く源泉徴収されることになります。この場合でも、受給者本人が確定申告を行うことにより、勤続年数に応じた退職所得控除を適用した本来の所得税額および復興特別所得税額との精算をすることができます。
受給者本人が確定申告書等作成コーナーなどを利用して申告書を作成・提出することで、過納となった税金の還付を受けることが可能です。
勤続年数が20年を超える場合の退職所得控除額はいくらになりますか?
勤続年数が20年を超える場合の退職所得控除額は、800万円に加えて勤続年数から20年を引いた年数1年あたり70万円を加算して計算します。
例えば勤続年数が30年の人の場合、800万円+70万円×(30年-20年)=800万円+70万円×10年=1,500万円が退職所得控除額となります。
20年以下の期間は1年あたり40万円の控除ですが、20年を超える期間については1年あたり70万円の控除となり、長期勤務に対する控除枠の加算額が大きくなります。
役員としての勤続年数が5年以下の場合はどうなりますか?
役員等勤続年数が5年以下である人が支払を受ける特定役員退職手当等については、2分の1計算の適用はありません。
退職金の額から退職所得控除額を差し引いた額がそのまま退職所得の金額になります。役員等には法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事および清算人ならびにこれら以外の者で法人の経営に従事している一定の者のほか、国会議員および地方公共団体の議会の議員、国家公務員および地方公務員が含まれます。
役員等勤続年数の計算においても1年未満の端数は1年に切り上げて年数を算出します。
障害が原因で退職した場合に控除額の加算はありますか?
障害者になったことが直接の原因で退職した場合、通常の計算方法により計算した退職所得控除額に100万円を加えた金額が控除額となります。
勤続年数に基づいて算出された控除額に対して一律で100万円が上乗せ加算されるため、退職所得の金額が減少し、所得税および復興特別所得税の負担が軽減されます。
なお、前年以前に退職金を受け取ったことがあるときまたは同一年中に2か所以上から退職金を受け取るときなどは、控除額の計算が異なることがあります。
退職金の税金計算で確認すべき重要な点
退職金を受け取る際の税金計算では、勤続年数に応じた退職所得控除額を算出し、原則として控除後の残額の2分の1に課税される分離課税の仕組みを正しく把握することが基本となります。
勤続年数の端数は1年に切り上げて計算し、20年以下は1年あたり40万円(最低80万円)、20年超は800万円に加えて20年超の年数1年あたり70万円を加算します。障害者となったことが直接の原因で退職した場合には100万円が加算されます。
特定役員退職手当等や短期退職手当等に該当する勤続年数5年以下のケースでは2分の1計算の適用除外や制限が設けられている点を確認する必要があります。特定役員退職手当等では全額が課税対象となり、短期退職手当等では控除後300万円を超える部分に2分の1計算が適用されません。
退職金の支払を受ける前に勤務先へ「退職所得の受給に関する申告書」を提出しているかを確認し、申告書未提出の場合や、医療費控除や寄附金控除の適用を受けるために確定申告書を提出する場合には、退職所得の金額を正確に記載して確定申告手続きを行いましょう。
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