源泉所得税の納期の特例の申請要件と納付スケジュール

従業員や専従者に給料を払う小規模事業主向け。源泉税を毎月納付から年2回納付にまとめる手続きと期限を知りたい

著者: アキスケ

ひと言でわかる

給与の支給人員が常時10人未満の事業主は納期の特例の承認を受けることで、毎月の源泉所得税を年2回(7月10日・翌年1月20日)にまとめて納付できる

従業員や専従者に給与を支払う小規模事業主は、毎月の給与から天引きした税金の納付管理に多くの手間を費やす状況に直面します。給与の支給人員が常時10人未満の事業主は納期の特例の承認を受けることで、毎月の源泉所得税を年2回(7月10日・翌年1月20日)にまとめて納付できます。

源泉徴収した所得税および復興特別所得税は、原則として給与などを実際に支払った月の翌月10日までに国に納めなければなりません。ただし、給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者は、申請手続きを行って承認を受けることで、半年分をまとめて納付できる納期の特例を利用できます。

国税庁のタックスアンサーNo.2505「源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」(令和7年4月1日現在法令等)に基づき、納期の特例の対象要件、対象となる支払の範囲、申請書の提出先とみなし承認の仕組み、納付スケジュールの具体例、要件から外れた場合の届出手続きを解説します。

給与等の支払を行う事務所などの所在地を所轄する税務署長への手続き方法や、納期の特例の適用を受ける前後の納期限の切り替わりについて、国税庁の公表情報に沿って正確な手順を確認できます。

源泉所得税の原則的な納付期限は給与などを実際に支払った月の翌月10日である

源泉徴収した所得税および復興特別所得税は、原則として給与などを実際に支払った月の翌月10日までに国に納めなければなりません。給与を支払う事業主は源泉徴収義務者として、従業員や専従者への支払額から所定の所得税および復興特別所得税を差し引いて預かり、定められた期日までに税務署へ納付する法的義務を負います。

原則的な毎月納付のルールに従う場合、給与の支払いが毎月発生する事業主は年間を通じて毎月納付手続きを行う必要があります。毎月の納付実務では、給与計算から税額の算出、納付書の作成、金融機関や税務署での納付手続きまでの一連の作業を翌月10日までに完了させる必要があります。

源泉徴収義務者が納付期限を過ぎた場合は税法上の不利益が生じる可能性があるため、納付スケジュールの管理は事業運営における重要な管理業務となります。日々の記帳や税額管理を円滑に行うためには、会計ソフトや源泉徴収計算ツールを活用して源泉徴収税額を正確に把握しておく体制が役立ちます。

毎月納付が原則とされている中で、小規模な事業者に対して納付回数を年2回に集約することを認めた制度が納期の特例です。原則的な納期限である翌月10日のルールを理解した上で、自社が特例の要件を満たすかどうかを確認することが実務の第一歩となります。

納期の特例を利用できる対象者は給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者である

納期の特例の対象となるのは、給与の支給人員が常時10人未満で一定の要件を満たす源泉徴収義務者です。常時10人未満という人員要件を満たす小規模な事業者であれば、源泉徴収した所得税および復興特別所得税を半年分まとめて納める特例の適用を受けられます。

給与等の支払を受ける者が常時10人未満であるかどうかの判定については、国税庁の質疑応答事例《源泉所得税》において「給与等の支払を受ける者が常時10人未満であるかどうかの判定」として取り扱いが示されています。平常時の給与支給人員が10人未満である事業所がこの要件に該当します。

一人社長の給与を支給する法人や、家族従業員に給料を支払う個人事業主など、常時雇用する従業員や役員が10人未満の事業主は納期の特例の要件を満たすことができます。常時10人未満の規模を維持している限り、この特例を利用して納付事務を集約することが可能です。

給与の支給人員に応じた納付区分の違いおよび納付頻度の比較は以下のとおりです。

項目常時10人未満の事業者常時10人以上の事業者
適用可否納期の特例の承認申請が可能納期の特例の対象外(原則納付)
納付の頻度年2回(半年分をまとめて納付)毎月納付(支払月の翌月10日までに納付)
納付期限7月10日および翌年1月20日給与等を実際に支払った月の翌月10日
対象税目給与・退職金・一定の報酬の源泉所得税等すべての源泉徴収税目

納期の特例の対象となる税目は給与・退職金と一定の専門家報酬に限られる

納期の特例の適用の対象となるのは、すべての源泉徴収税目ではなく、法律で限定された支払区分のみです。この特例の適用の対象となるのは、給与や退職金から源泉徴収をした所得税および復興特別所得税と、税理士、弁護士、司法書士などの一定の報酬から源泉徴収をした所得税および復興特別所得税に限られています。

従業員や専従者に支給する毎月の給与や賞与、役員に支払う役員報酬、退職時に支払う退職金から源泉徴収した所得税および復興特別所得税は特例の対象に含まれます。また、顧問契約等に基づいて税理士、弁護士、司法書士へ支払う一定の報酬から源泉徴収した税額も、納期の特例として半年分をまとめて納付することが認められています。

税理士、弁護士、司法書士などの一定の報酬以外の報酬・料金等から源泉徴収した所得税および復興特別所得税は、納期の特例の承認を受けている事業主であっても特例の対象外となります。税理士・弁護士・司法書士以外の報酬から源泉徴収した税額については、納期の特例に関わらず支払った月の翌月10日までに原則納付しなければなりません。

納期の特例の対象となる支払区分と対象外となる支払区分の対比は以下の表のとおり整理されます。

支払区分納期の特例の対象区分納付スケジュールの扱い
給与・賞与納期の特例の対象年2回(7月10日・翌年1月20日)にまとめて納付
退職金納期の特例の対象年2回(7月10日・翌年1月20日)にまとめて納付
税理士・弁護士・司法書士などの一定の報酬納期の特例の対象年2回(7月10日・翌年1月20日)にまとめて納付
税理士・弁護士・司法書士などの一定の報酬以外の報酬・料金等納期の特例の対象外支払った月の翌月10日までに毎月納付

納期の特例における納付スケジュールは7月10日と翌年1月20日の年2回である

納期の特例の適用を受けている場合、源泉所得税および復興特別所得税の納付期限は7月10日と翌年1月20日の年2回となります。毎月発生していた納付手続きを半年分ずつまとめることで、年間の納付事務を2回に集約できます。

納期の特例における対象期間と納期限の対応関係は明確に定められています。その年の1月から6月までに源泉徴収した所得税および復興特別所得税は7月10日が納付期限となり、その年の7月から12月までに源泉徴収した所得税および復興特別所得税は翌年1月20日が納付期限となります。

これらの納付期限が日曜日、祝日などの休日や土曜日に当たる場合には、その休日明けの日が納付期限となります。7月10日や翌年1月20日が土曜日や日曜日に該当する場合、税務上の納期限は自動的にその直後の休日明けの日へ繰り延べられます。

納期の特例を利用すると、半年分の源泉徴収税額を一度にまとめて納付することになります。毎月の給与から天引きした税額を適切に管理しておき、7月10日および翌年1月20日の納期限に確実に納付できる資金管理を行っておくことが実務上重要です。

納付区分源泉徴収の対象期間納付期限
原則(毎月納付)給与などを実際に支払った月支払った月の翌月10日
納期の特例(前半)その年の1月から6月までに源泉徴収した分7月10日(休日の場合は休日明けの日)
納期の特例(後半)その年の7月から12月までに源泉徴収した分翌年1月20日(休日の場合は休日明けの日)

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納期の特例の適用を受けるには所轄税務署長へ申請書を提出して承認を受ける

納期の特例の適用を受けるためには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」(納期の特例申請書)を提出することが必要です。この納期の特例申請書の提出先は、給与等の支払を行う事務所などの所在地を所轄する税務署長(給与等を支払う事務所などの所在地を所轄する税務署)です。

納期の特例申請書を提出したあとの承認手続きには、みなし承認の規定が設けられています。税務署長から納期の特例の申請について却下の通知がない場合には、この納期の特例申請書を提出した月の翌月末日に承認があったものとみなされます。個別の承認通知を待つことなく、法令の定めに従って承認が成立します。

納期の特例の適用の対象になる時期は、納期の特例申請書を提出した月の翌月に源泉徴収する所得税および復興特別所得税からです。申請書を提出した当月に源泉徴収する分については特例の対象とならず、原則どおり翌月10日までに納付する必要があるため、申請月と適用開始月の関係を正確に把握しておく必要があります。

青色申告を行う個人事業主や、新しく事業を開始した法人の事業主であっても、給与等の支払を行う事務所などの所在地を所轄する税務署長へ納期の特例申請書を提出することで特例の承認を受けられます。

納期の特例申請書を提出した直後はいつの給与から年2回納付に変わるか

納期の特例申請書を提出した直後は、申請書を提出した月によって各支給分の納期限が異なります。申請書を提出した月の翌月に源泉徴収する所得税および復興特別所得税から納期の特例の適用の対象となるため、提出当月の支給分までは原則どおり翌月10日までに納付する必要があります。

国税庁タックスアンサーNo.2505では、納期の特例申請書を提出した月が2月中である場合の具体例が示されています。納期の特例申請書を提出した月が2月中である場合、2月支給分の納期限は3月10日となり、3月〜6月支給分の納期限は7月10日となります。

2月中に申請書を提出した場合、2月に支払った給与等から源泉徴収した税額は特例の対象外となるため、翌月である3月10日までに原則どおり納付します。一方、翌月である3月から6月までに支給する給与等については納期の特例が適用され、7月10日にまとめて納付することになります。

申請書提出直後の支給月と納期限の関係は以下の表のとおりです。

申請書を提出した月対象となる給与等の支給月納付期限納付区分の扱い
2月中2月支給分3月10日原則納付(毎月納付扱い)
3月〜6月支給分7月10日納期の特例適用(まとめて納付)

納付期限が日曜日、祝日などの休日や土曜日に当たる場合には、その休日明けの日が納付期限となります。

支給人員が常時10人以上になった場合は届出書の提出が必要である

給与の支給人員が常時10人以上となり、源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなった場合は、「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を提出することが必要です。事業規模の拡大や雇用の増加によって常時10人未満の要件を満たさなくなったときは、速やかに所轄税務署長へ届出書を提出しなければなりません。

この届出書を提出した場合には、その提出した日の属する納期の特例の期間から所得税法第216条に規定する納期の特例の承認の効力が失われます。特例の効力が失われると、提出日の属する期間から原則的な毎月納付のルールへと移行します。

届出書を提出した直後の納付期限と使用する徴収高計算書の区分については、国税庁タックスアンサーNo.2505において具体例が示されています。届出書を提出した日が3月中の場合、1月〜2月支給分の納期限は4月10日、3月支給分の納期限は4月10日、4月以後支給分の納期限は翌月10日となります。

このとき、1月から2月分は納期特例分の徴収高計算書を使用し、3月分以降は一般分(毎月納付用)の徴収高計算書を使用します。届出書を提出した日の属する月(3月分)から一般分の徴収高計算書を使用する点に注意が必要です。

届出書を3月中に提出した場合の納付スケジュールと徴収高計算書の区分は以下の表のとおり整理されます。

届出書を提出した日対象となる給与等の支給月納付期限使用する徴収高計算書の区分
3月中1月〜2月支給分4月10日(※)納期特例分の徴収高計算書
3月支給分4月10日一般分(毎月納付用)の徴収高計算書
4月以後支給分翌月10日一般分(毎月納付用)の徴収高計算書

※ 1月から2月分は、納期特例分の徴収高計算書を使用し、3月分以降は、一般分(毎月納付用)の徴収高計算書を使用します。これらの納付期限が日曜日、祝日などの休日や土曜日に当たる場合には、その休日明けの日が納付期限となります。

源泉所得税の納期の特例に関する根拠法令と相談窓口

源泉所得税および復興特別所得税の納付期限と納期の特例は、所得税法をはじめとする国税関連法令に基づき規定されています。国税庁タックスアンサーNo.2505における根拠法令等として、所法183、199、204、216、217、218、219、復興財確法28、通法10、通令2、所基通219-1が定められています(令和7年4月1日現在法令等)。

関連する税務手続としては、[手続名]源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請や、[手続名]源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなった場合の届出が規定されています。また、パンフレット・手引きとして「源泉所得税関係」、関連する質疑応答事例《源泉所得税》として「給与等の支払を受ける者が常時10人未満であるかどうかの判定」が公表されています。

国税に関する相談は国税局電話相談センター等で行われており、税についての相談窓口から電話相談を利用できます。確定申告や源泉徴収事務、納期の特例の手続きにおいて疑問が生じた場合は、給与等を支払う事務所などの所在地を所轄する税務署や相談窓口を通じて正確な手順を確認できます。

よくある質問

給与の支給人員が常時10人未満とはどのような事業主が対象ですか?

給与の支給人員が常時10人未満で一定の要件を満たす源泉徴収義務者が納期の特例の対象となります。平常時において給与等の支払を受ける者の数が10人未満である小規模事業主や個人事業主、法人が該当します。

常時10人未満であるかどうかの具体的な判定基準については、国税庁の関連する質疑応答事例《源泉所得税》「給与等の支払を受ける者が常時10人未満であるかどうかの判定」において取扱いが示されています。従業員や専従者などに給与を支払う小規模事業者がこの要件を満たす場合、納期の特例の承認申請を行うことができます。

納期の特例申請書を提出するといつから年2回の納付になりますか?

納期の特例申請書を提出した月の翌月に源泉徴収する所得税および復興特別所得税から納期の特例の適用の対象になります。税務署長から納期の特例の申請について却下の通知がない場合には、申請書を提出した月の翌月末日に承認があったものとみなされます。

たとえば納期の特例申請書を2月中に提出した場合、2月支給分の納期限は翌月である3月10日ですが、3月〜6月支給分の納期限は7月10日となります。申請書を提出した当月の支給分までは原則どおり翌月10日までに納付する必要があります。

税理士や弁護士への報酬も納期の特例でまとめて納付できますか?

税理士、弁護士、司法書士などの一定の報酬から源泉徴収をした所得税および復興特別所得税は納期の特例の対象に含まれるため、年2回にまとめて納付できます。

納期の特例の適用の対象となるのは、給与や退職金から源泉徴収をした所得税および復興特別所得税と、税理士、弁護士、司法書士などの一定の報酬から源泉徴収をした所得税および復興特別所得税に限られています。これら以外の報酬・料金等から源泉徴収した税額は特例の対象外であり、支払月の翌月10日までに納付する必要があります。

納期の特例の納付期限が土曜日や日曜日と重なる場合はどうなりますか?

納付期限が日曜日、祝日などの休日や土曜日に当たる場合には、その休日明けの日が納付期限となります。

7月10日や翌年1月20日の納期限が土曜日や日曜日、祝日などの休日に該当する場合であっても、休日明けの日までに納付手続きを完了すれば期限内納付として取り扱われます。

従業員が増えて常時10人以上になったときはどのような手続きが必要ですか?

給与の支給人員が常時10人以上となり要件に該当しなくなった場合は、「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を給与等の支払を行う事務所などの所在地を所轄する税務署長に提出することが必要です。

この届出書を提出した場合には、その提出した日の属する納期の特例の期間から所得税法第216条に規定する納期の特例の承認の効力が失われます。たとえば届出書を3月中に提出した場合、1月〜2月支給分は4月10日(納期特例分の徴収高計算書を使用)、3月支給分は4月10日(一般分の徴収高計算書を使用)、4月以後支給分は翌月10日(一般分の徴収高計算書を使用)が納付期限となります。

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