インボイス登録を取り消すには?登録取消しの届出書と効力発生日

個人事業主・小規模法人

著者: アキスケ

ひと言でわかる

インボイス登録を取り消すには、適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書を提出します。取消しの効力がいつから生じるかは課税期間と提出時期で変わるため、届出書と国税庁の案内を確認します。

インボイス発行事業者としての登録を完了したものの、取引環境の変化や事業方針の見直しに伴い、登録を取り消して免税事業者へ戻る手続きを検討している個人事業主や小規模法人は少なくありません。インボイス登録を取り消すには、適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書を提出します。取消しの効力がいつから生じるかは課税期間と提出時期で変わるため、届出書と国税庁の案内を確認します。

消費税法において、適格請求書発行事業者の登録を受けている事業者は、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても消費税の納税義務が免除されません。そのため、免税事業者に戻ることを希望する場合には、所定の書類を税務署長へ提出してインボイス発行事業者の登録を取り消す手続きを行う必要があります。

消費税の納税義務が免除されるかどうかは、基準期間における課税売上高だけでなく、特定期間における判定や、消費税課税事業者選択届出書の提出履歴など複数の要件によって決まります。国税庁のタックスアンサーや公表パンフレットに基づき、登録取消しの手続き方法と消費税の納税義務に関する制度内容を正確に把握することが重要です。

インボイス登録を取り消すには適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書を提出する

適格請求書発行事業者の登録を取り消すための正式な手続きは、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を納税地の所轄税務署長へ提出することです。国税庁が案内している所定の様式に必要事項を記載して提出することで、適格請求書発行事業者の登録を取りやめる意思表示を行うことができます。

適格請求書発行事業者としての登録を受けると、基準期間の課税売上高に関わらず課税事業者として消費税の申告および納税を行う義務が生じます。事業の取引形態や顧客層の見直しによってインボイスを交付する必要性が低下した場合でも、自動的に登録が消滅することはないため、必ず「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出して登録取消しの手続きを進める必要があります。

適格請求書発行事業者の登録取消しに関する効力発生時期は、課税期間と届出書を提出した時期に応じて取り扱いが異なります。適用を受けたい課税期間から確実に取消しの効力を生じさせるためにも、届出書に記載された案内や国税庁の公表資料を確認した上で、余裕を持って税務署へ提出することが求められます。

インボイス制度(適格請求書等保存方式)のもとでは、交付する請求書や領収書の記載要件を適正に整える実務が求められます。登録の取消しを行う前後の取引においては、取引先に対して交付する書類の形式を確認しておく必要があり、日々の業務で発行する書類の記載内容についてはインボイスの記載事項に関するルールを把握しておくことが役立ちます。

インボイス登録を取り消すと消費税の納税義務はどうなるのか

適格請求書発行事業者の登録を取り消してインボイス発行事業者でなくなった場合、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であれば、原則として消費税の納税義務が免除されます。国税庁のタックスアンサー(コード6501「納税義務の免除」)に示されている通り、事業者は国内において行った課税資産の譲渡等について消費税を納める義務がありますが、基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合には原則として納税義務が免除されます。

消費税の免税判定における基準期間とは、個人事業者の場合はその年の前々年をいい、事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度をいいます。適格請求書発行事業者の登録を受けている期間中は、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても納税義務は免除されません。そのため、インボイス登録を取り消すことで、本来の基準期間に基づく免税点制度の適用対象に戻ることができます。

免税事業者が課税期間の途中で適格請求書発行事業者の登録を受けた場合には、その登録日からその課税期間の末日までに行った課税資産の譲渡等が消費税の申告の対象となります。登録を取り消して免税事業者へ戻る際にも、申告が必要となる課税期間の範囲や確定申告における税額計算の対象期間を正確に区別して整理することが不可欠です。

課税売上高の集計や課税期間ごとの消費税額の試算を行う際には、消費税の計算に関する基準を確認し、自身の事業における税負担や申告義務の有無を正しく判定しておくことが実務上の混乱を防ぐ鍵となります。

基準期間の売上が1,000万円以下でも納税義務が免除されない条件とは何か

基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間の売上高や給与等支払額、法人の設立状況などによって納税義務が免除されない場合があります。国税庁のタックスアンサー(コード6501「納税義務の免除」、令和7年4月1日現在法令等)では、基準期間の売上高が1,000万円以下の事業者であっても納税義務が免除されない具体的な基準が定められています。

特定期間における課税売上高が1,000万円を超える場合には、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても納税義務は免除されません。この特定期間とは、個人事業者の場合はその年の前年の1月1日から6月30日までの期間をいい、法人の場合は原則としてその事業年度の前事業年度開始の日以後6か月の期間をいいます(前事業年度が1年未満である場合には特定期間が異なる場合があります)。特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額により判定することができます。いずれの基準で判定するかは納税者の任意です。

※ 令和6年10月1日以後に開始する課税期間から、国外事業者(所得税法に規定する非居住者である個人事業者および法人税法に規定する外国法人)については、特定期間における1,000万円の判定を、給与等支払額の合計額により行うことはできません。

新たに設立された法人については、設立1期目および2期目の基準期間がないため原則として納税義務が免除されます。ただし、基準期間がない事業年度であっても、その事業年度の開始の日における資本金の額または出資の金額が1,000万円以上である法人や特定新規設立法人に該当する法人の場合は、納税義務は免除されません(国税庁コード6503「基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」)。

相続、合併、分割があったことにより被相続人、被合併法人、分割法人の事業を承継した場合で、その被相続人、被合併法人、分割法人の基準期間に対応する期間における課税売上高が1,000万円を超える場合などの一定の基準に該当するときも、承継した事業者の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても納税義務は免除されません(国税庁コード6531「新規開業又は法人の新規設立のとき」)。

課税事業者が高額特定資産または自己建設高額特定資産の仕入れ等を行った場合にも、仕入れ等の日の属する課税期間の翌課税期間から一定の期間について、事業者免税点制度の適用および簡易課税制度の選択が制限されます(国税庁コード6502「高額特定資産を取得した場合等の納税義務の免除等の特例」)。

判定区分 対象となる条件・期間の基準 納税義務への影響
適格請求書発行事業者の登録 適格請求書発行事業者の登録を受けている場合 基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても納税義務は免除されない
特定期間における判定 個人は前年の1月1日から6月30日、法人は前事業年度開始の日以後6か月の期間で課税売上高または給与等支払額が1,000万円を超える場合 基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても納税義務は免除されない
新設法人・特定新規設立法人 設立1期目・2期目で事業年度開始日の資本金または出資の金額が1,000万円以上、または特定新規設立法人に該当する場合 基準期間がない事業年度であっても納税義務は免除されない
事業承継(相続・合併・分割) 被承継者の基準期間に対応する期間における課税売上高が1,000万円を超える場合などの一定基準に該当する場合 基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても納税義務は免除されない
高額特定資産の取得等 課税事業者が高額特定資産または自己建設高額特定資産の仕入れ等を行った場合 翌課税期間から一定期間、事業者免税点制度の適用および簡易課税制度の選択が制限される

消費税課税事業者選択届出書を提出している場合の注意点はあるか

インボイス登録とは別に自ら「消費税課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者となっている場合、インボイス登録を取り消すだけでは免税事業者に戻ることはできません。消費税課税事業者選択届出書を提出して課税事業者となっている課税期間については、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても納税義務は免除されません。

消費税課税事業者選択届出書を提出した事業者が課税事業者を選択することをやめようとする場合には、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出する必要があります。この届出書を提出した場合には、その提出があった日の属する課税期間の末日の翌日からその効力が失われます。

ただし、消費税課税事業者選択届出書を提出した事業者は、事業を廃止した場合を除き、原則として課税事業者となった日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ消費税課税事業者選択不適用届出書を提出することができません。そのため、課税事業者となった日から2年間は免税事業者となることはできません。

「消費税課税事業者選択届出書」を提出した事業者が、課税事業者となった日から2年を経過する日までの間に開始した各課税期間中に、調整対象固定資産の課税仕入れ等を行い、かつその仕入れた日の属する課税期間の確定申告を一般課税で行った場合には、調整対象固定資産の仕入れ等を行った課税期間の初日から原則として3年間は免税事業者となることができず、2年間は「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することもできません。

ここでいう「調整対象固定資産」とは、棚卸資産以外の資産で、建物およびその附属設備、構築物、機械および装置、船舶、航空機、車両および運搬具、工具、器具および備品、鉱業権その他の資産で一の取引単位の価額(消費税および地方消費税に相当する額を除いた価額)が100万円以上のものをいいます。

消費税課税事業者選択届出書を提出した場合には、原則として提出した日の属する課税期間の翌課税期間以後の課税期間から納税義務が免除されなくなります(事業を開始した日の属する課税期間など一定の場合には提出日の属する課税期間から適用可能)。この場合、当課税期間の末日が土曜日、日曜日および国民の祝日等にあたる場合でも、翌課税期間から適用を受けたい場合には当課税期間中に提出する必要があり、翌日等の平日に提出期限は延長されません。

課税事業者としての申告方法を検討する際には、売上規模や事業区分に応じて計算を行う消費税の簡易課税制度の適用要件や届出の提出制限についても併せて整理しておくことが重要です。

項目 要件および制度上の取り扱い
課税事業者選択不適用届出書の効力 提出があった日の属する課税期間の末日の翌日からその効力が失われる
不適用届出書の提出制限期間 事業を廃止した場合を除き、原則として課税事業者となった日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ提出不可(課税事業者となった日から2年間は免税事業者になれない)
調整対象固定資産取得時の制限 課税事業者となった日から2年経過日までの間に一取引単位100万円以上の調整対象固定資産を仕入れ一般課税で申告した場合、仕入れた課税期間の初日から原則3年間は免税事業者となれず、2年間は消費税簡易課税制度選択届出書も提出不可
届出書の提出期限と休日の関係 翌課税期間から適用を受ける場合、当課税期間の末日が土曜日、日曜日、国民の祝日等であっても当課税期間中に提出が必要(翌日等の平日に期限は延長されない)

国税庁が案内する消費税の各種届出書にはどのような種類があるか

国税庁のパンフレット「消費税の届出書等について(令和8年2月)」には、事業者の登録状況や納税義務の異動に応じて税務署へ提出する各種届出書の様式が案内されています。インボイス制度の登録取消しだけでなく、事業形態や納税状況の変化に応じて適切な届出書を選択して提出することが実務上不可欠です。

適格請求書発行事業者に関連する手続書類としては、「適格請求書発行事業者の登録申請書」や「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」のほか、登録簿の公開情報に変更が生じた場合の「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」や「適格請求書発行事業者登録簿の登載事項変更届出書」が用意されています。登録内容に変更があった場合や登録を取りやめる場合には、これらの指定様式を用いて税務署長へ届け出ます。

また、納税義務者でなくなった事業者が提出する「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」や、課税事業者の選択を取りやめる「消費税課税事業者選択不適用届出書」、簡易課税制度を取りやめる「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」など、消費税制度全般に関する多様な届出書が存在します。届出書の名称や用途を正確に区別し、自身の状況に応じた書類を選択することが求められます。

各種届出書の提出時期や日々の帳簿管理を漏れなく進めるためには、クラウド会計ソフトを活用して税務スケジュールや取引データの管理体制を整えておくことが実務の円滑化につながります。

届出書等の名称 主な提出目的・制度上の位置付け
適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書 適格請求書発行事業者の登録を取り消すために提出する届出書
適格請求書発行事業者の登録申請書 適格請求書発行事業者としての登録を受けるために提出する申請書
適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書 適格請求書発行事業者の公表事項の公表または変更を申し出るための書類
適格請求書発行事業者登録簿の登載事項変更届出書 適格請求書発行事業者登録簿に登載された事項の変更を届け出るための書類
消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書 基準期間の売上減少等により納税義務者でなくなった事業者が提出する届出書
消費税課税事業者選択不適用届出書 消費税課税事業者選択届出書による課税事業者の選択を取りやめるための届出書
消費税簡易課税制度選択不適用届出書 消費税簡易課税制度の適用を取りやめるために提出する届出書

登録取消しや免税事業者の判定を進める際に確認すべき実務の流れとは

適格請求書発行事業者の登録取消しを検討する際は、まず現在の登録状況と過去に提出した届出書の種類を正確に整理することが重要です。インボイス登録の取消しのみを行えば免税事業者に戻れる状態なのか、それとも過去に消費税課税事業者選択届出書を提出しており不適用届出書の提出も必要なのかによって踏むべき手順が異なります。

インボイス登録の取消しによる効力発生時期は、課税期間と届出書を提出した時期によって異なります。希望する課税期間から確実に登録を取り消して免税事業者としての取り扱いを受けるためには、国税庁の案内や届出書に記載されている要件を事前に確認し、提出期限に遅れないようスケジュールを組む必要があります。

消費税の各種手続きや納税義務の免除判定を適切に行うためには、日々の売上高や給与等支払額の帳簿記録を正確に管理することが欠かせません。国税庁のタックスアンサー(コード6498「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」、コード6629「消費税の各種届出書」)や電話相談センター等の相談窓口を活用しながら、漏れのない手続きを進めることが推奨されます。

PR

青色申告や帳簿管理に|やよいの青色申告 オンラインの機能と料金

記帳や申告ソフトを検討する際は、料金やサポート体制、消費税申告への対応状況を公式で確認しましょう。取引日や税区分、特例の要件は利用者自身での確認が必要となります。キャンペーンの対象条件や初年度・更新後の条件も公式でご確認ください。

最新の機能や料金プラン、キャンペーンの適用条件および初年度・更新後の利用条件は、必ずやよい公式サイトにてご確認ください。

よくある質問

インボイス登録を取り消すにはどのような書類を提出すればよいですか?

適格請求書発行事業者の登録を取り消すには、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を納税地の所轄税務署長へ提出します。国税庁が案内している所定の届出書様式を使用して手続きを行います。

取消しの効力がいつから生じるかは課税期間と届出書の提出時期によって異なるため、届出書の記載要領や国税庁の案内を確認した上で提出時期を判断する必要があります。

登録を取り消せばすぐに免税事業者に戻ることができますか?

適格請求書発行事業者の登録を取り消した場合であっても、基準期間における課税売上高が1,000万円を超える場合や、特定期間の判定で1,000万円を超える場合などは納税義務が免除されません。

また、過去に「消費税課税事業者選択届出書」を提出している場合は、別途「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出する必要があり、原則として課税事業者となった日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ提出できないため、課税事業者となった日から2年間は免税事業者に戻ることができません。

特定期間の判定ではどのような基準が用いられますか?

特定期間における判定は、個人事業者の場合は前年の1月1日から6月30日までの期間、法人の場合は原則として前事業年度開始の日以後6か月の期間における課税売上高が1,000万円を超えるかどうかで判定します。

なお、特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高に代えて給与等支払額の合計額により判定することも可能です(令和6年10月1日以後に開始する課税期間からの国外事業者を除く)。いずれの基準を用いるかは納税者の任意とされています。

高額な設備を購入した後に免税事業者へ戻ることはできますか?

「消費税課税事業者選択届出書」を提出した事業者が、課税事業者となった日から2年を経過する日までの間に一取引単位100万円以上の調整対象固定資産の課税仕入れ等を行い、一般課税で申告した場合は、仕入れ等を行った課税期間の初日から原則として3年間は免税事業者となることができません。

また、課税事業者が高額特定資産または自己建設高額特定資産の仕入れ等を行った場合にも、仕入れ等の日の属する課税期間の翌課税期間から一定期間について事業者免税点制度の適用が制限されます。

届出書の提出期限が土日祝日にあたる場合は平日に延長されますか?

翌課税期間から課税事業者を選択するために消費税課税事業者選択届出書を提出する場合、当課税期間の末日が土曜日、日曜日および国民の祝日等にあたる場合であっても提出期限は平日に延長されません。

そのため、翌課税期間から適用を受けたい場合には、当課税期間の末日が休日であっても当課税期間中に消費税課税事業者選択届出書を税務署長へ提出しておく必要があります。