消費税の簡易課税制度のみなし仕入率と第1種から第6種までの事業区分

消費税の申告で簡易課税を選択したい個人事業主や法人向け。簡易課税のみなし仕入率一覧と自分の事業が第何種に当たるか知りたい

著者: アキスケ

ひと言でわかる

基準期間の課税売上高が5,000万円以下なら簡易課税を選択でき、事業区分に応じたみなし仕入率(40%〜90%)を用いて納付税額を計算できる

消費税の申告において仕入れに係る税額計算の事務負担を軽減したい事業者は、簡易課税制度を選択できる基準に該当するか確認する必要があります。基準期間の課税売上高が5,000万円以下なら簡易課税を選択でき、事業区分に応じたみなし仕入率(40%〜90%)を用いて納付税額を計算できます。

簡易課税制度とは、中小事業者の納税事務負担に配慮する観点から、事業者の選択により、売上げに係る消費税額を基礎として仕入れに係る消費税額を算出することができる制度です。国税庁のタックスアンサーNo.6505「簡易課税制度」(令和7年4月1日現在法令等)によると、納税地の所轄税務署長に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した課税事業者が本制度を適用できます。

事業の種類は第1種事業から第6種事業までに区分されており、卸売業に適用される90%から不動産業に適用される40%まで、事業区分に応じたみなし仕入率が定められています。実際の課税仕入れにかかった消費税額を個別に集計することなく、課税売上げに係る消費税額にみなし仕入率を乗じることで仕入れに係る消費税額を算出します。

2種類以上の事業を営む事業者のための特例計算や、区分経理を行っていない場合の取扱い、届出書の提出期限や2年間の継続適用義務など、制度の適用には細かな要件が存在します。確定申告の手続きを適切に進めるため、自身の営む事業の事業区分と正しい計算方法を理解しておくことが重要です。

簡易課税制度を適用できる基準期間の課税売上高の条件はいくらか

簡易課税制度を適用できるのは、基準期間における課税売上高が5,000万円以下の課税期間です。基準期間とは、個人事業者の場合は前々年、法人の場合は原則として前々事業年度を指します。

基準期間における課税売上高が5,000万円以下である課税事業者が、納税地の所轄税務署長に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出している場合に、簡易課税制度による税額計算が可能となります。基準期間における課税売上高が5,000万円を超える課税期間については、事前に届出書を提出していても簡易課税制度を適用することはできません。

国税庁のタックスアンサーNo.6505(令和7年4月1日現在法令等)によると、簡易課税制度は中小事業者の納税事務負担に配慮する観点から設けられた制度です。基準期間の課税売上高が1,000万円を超え5,000万円以下である事業者が主な対象となります。

なお、基準期間における課税売上高が1,000万円以下となり免税事業者となった場合や、5,000万円を超えて簡易課税制度が適用できなくなった場合でも、その後の課税期間で基準期間における課税売上高が1,000万円を超え5,000万円以下となったときは、効力が継続します。その課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出していない限り、再び簡易課税制度が適用されます。

第1種事業から第6種事業までのみなし仕入率はどのように区分されているか

簡易課税制度のみなし仕入率は、事業の種類に応じて第1種事業の90%から第6種事業の40%まで区分されています。事業者は自身が営む事業がどの事業区分に該当するかによって、売上げに係る消費税額に乗じるみなし仕入率を決定します。

国税庁のタックスアンサーNo.6505「簡易課税制度」(令和7年4月1日現在法令等)における事業区分とみなし仕入率の定めは次の通りです。

事業区分 みなし仕入率 該当する事業の種類
第1種事業 90% 卸売業
第2種事業 80% 小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業に限る)
第3種事業 70% 農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業および水道業
第4種事業 60% 第1種事業、第2種事業、第3種事業、第5種事業および第6種事業以外の事業
第5種事業 50% 運輸通信業、金融業および保険業、サービス業(飲食店業に該当するものを除く)
第6種事業 40% 不動産業

第1種事業は卸売業に適用され、みなし仕入率は90%に設定されています。第2種事業は小売業のほか、農業・林業・漁業のうち飲食料品の譲渡に係る事業が該当し、みなし仕入率は80%となります。

第3種事業は、農業・林業・漁業のうち飲食料品の譲渡に係る事業を除いたもの、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業および水道業が該当し、みなし仕入率は70%です。

第4種事業は、第1種事業、第2種事業、第3種事業、第5種事業および第6種事業以外の事業であり、みなし仕入率は60%です。なお、飲食店業は第5種事業のサービス業から除かれているため、第4種事業等に該当します。

第5種事業は運輸通信業、金融業および保険業、サービス業(飲食店業に該当するものを除く)でみなし仕入率は50%、第6種事業は不動産業でみなし仕入率は40%が適用されます。消費税の仕入控除税額を算出する際は、これらの区分に応じた率を用います。

複数の事業を営む場合の仕入控除税額はどのように計算するか

2種類以上の事業を営む事業者は、事業ごとに区分して計算する原則法のほか、特定の事業の課税売上高が全体の75パーセント以上を占める場合に適用できる特例計算を選択できます。事業区分ごとに課税売上げに係る消費税額を把握し、それぞれのみなし仕入率を乗じて合算するのが基本的な計算方法です。

国税庁のタックスアンサーNo.6505(令和7年4月1日現在法令等)によると、第1種事業から第6種事業までのうち1種類の事業だけを営む事業者の場合は、売上げに係る消費税額にその事業のみなし仕入率を乗じて仕入れに係る消費税額を算出します。一方、2種類以上の事業を営む事業者は原則法または簡便法によって計算します。ただし、貸倒回収額がある場合、または売上対価の返還等がある場合で各種事業に係る消費税額からそれぞれの事業の売上対価の返還等に係る消費税額を控除して控除しきれない場合には、簡便法により計算することはできません。

2種類以上の事業を営む事業者の計算負担に配慮するため、次の特例計算が定められています。

営む事業の種類 売上割合の条件 適用できるみなし仕入率の特例
2種類以上の事業を営む事業者 1種類の事業の課税売上高が全体の課税売上高の75パーセント以上を占める場合 その事業のみなし仕入率を全体の課税売上げに対して適用することができる
3種類以上の事業を営む事業者 特定の2種類の事業の課税売上高の合計額が全体の課税売上高の75パーセント以上を占める場合 その2業種のうちみなし仕入率の高い方の事業に係る課税売上高にはその率を適用し、それ以外の課税売上高にはその2種類の事業のうち低い方のみなし仕入率を適用することができる

例えば、3種類以上の事業を営む事業者の第1種事業および第2種事業に係る課税売上高の合計が全体の課税売上高の75パーセント以上を占める場合、第1種事業に係る課税売上高には90%を適用し、それ以外の課税売上高については第2種事業のみなし仕入率である80%を適用して計算することができます。

特例計算においても、貸倒回収額がある場合や、売上対価の返還等に係る税額を各種事業の税額から控除しきれない場合を除き、簡便法による計算を行うことが認められています。

課税売上げを事業ごとに区分していない場合の税額計算はどうなるか

2種類以上の事業を営む事業者が課税売上げを事業ごとに区分していない場合、その区分をしていない部分については、その区分していない事業のうち一番低いみなし仕入率が適用されます。事業ごとの売上区分を怠ると仕入控除税額が小さくなり、納付税額が増加する可能性があります。

国税庁のタックスアンサーNo.6505(令和7年4月1日現在法令等)では、「事業区分をしていない場合の取扱い」として、2種類以上の事業を営む事業者が課税売上げを事業ごとに区分していないときには、区分をしていない部分について、その区分していない事業のうち一番低いみなし仕入率を適用して仕入控除税額を計算すると規定されています。

例えば、みなし仕入率80%の第2種事業とみなし仕入率50%の第5種事業を営む事業者が、売上高を事業区分ごとに分けて経理していない場合、区分していない売上げ全体に対して一番低い50%のみなし仕入率が適用されます。

帳簿づけの段階から事業区分ごとに売上を明確に分けて記録しておくことが不可欠です。日々の取引入力や区分経理を正確に行うために会計ソフトを活用して事業ごとの売上管理を徹底することが推奨されます。

消費税簡易課税制度選択届出書はいつまでに提出すべきか

簡易課税制度の適用を受けようとする事業者は、原則として適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。課税期間が始まってから提出しても、その課税期間から簡易課税制度を適用することはできません。

ただし、適格請求書発行事業者の登録を受ける事業者については提出期限の特例が設けられています。免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間に適格請求書発行事業者の登録を受け、登録を受けた日から課税事業者となる場合は、その登録を受けた日の属する課税期間中に消費税簡易課税制度選択届出書を提出すれば、その課税期間から簡易課税制度の適用を受けることができます。

また、適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)の適用を受けた適格請求書発行事業者は、この経過措置(2割特例)の適用を受けた課税期間の翌課税期間中に消費税簡易課税制度選択届出書を提出すれば、その課税期間から簡易課税制度の適用を受けることができます。インボイス経過措置からの移行時にも期限の特例が認められています。

災害その他やむを得ない事情により、課税期間開始前に消費税簡易課税制度選択届出書の提出ができなかった場合には、届出期限についての特例が適用できる場合があります。国税庁のコード6630「やむを得ない事情により課税事業者選択届出書等の提出が間に合わなかった場合」やコード6632「災害等により簡易課税制度の適用を受ける(受けることをやめる)必要が生じた場合」に手続きの定めがあります。

簡易課税制度の適用をやめる手続きと制限期間はあるか

簡易課税制度の適用をやめようとする事業者は、適用をやめようとする課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。さらに、届出書の効力が生ずる課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ不適用届出書を提出できないという制限期間が定められています。

簡易課税制度の適用を受けている事業者は、事業を廃止した場合を除き、「消費税簡易課税制度選択届出書」の効力が生ずる課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出することはできません。

災害その他やむを得ない事情によって課税期間開始前に消費税簡易課税制度選択不適用届出書を提出できなかった場合には、届出期限についての特例が適用できる場合があります。

簡易課税制度から本則課税への変更を検討する際は、2年間の適用期間の制限を考慮して計画を立てる必要があります。

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基準期間の課税売上高が5,000万円を超えた場合の効力はどうなるか

「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出している事業者であっても、基準期間の課税売上高が5,000万円を超える課税期間については簡易課税制度を適用できません。この場合、その課税期間については本則課税によって税額を計算することになります。

基準期間における課税売上高が5,000万円を超えたために簡易課税制度を適用できなくなった場合や、基準期間における課税売上高が1,000万円以下となり免税事業者となった場合でも、提出済みの「消費税簡易課税制度選択届出書」の効力は失われません。

その後の課税期間において基準期間における課税売上高が1,000万円を超え5,000万円以下となった場合には、その課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出している場合を除き、再び簡易課税制度が適用されます。

売上高の増減によって基準期間の課税売上高が5,000万円や1,000万円の境界を行き来する事業者は、課税期間ごとの適用関係を正確に把握しておく必要があります。

恒久的施設を有しない国外事業者は簡易課税制度の適用を受けられるか

令和6年10月1日以後に開始する課税期間から、その課税期間の初日において恒久的施設(PE)を有しない国外事業者は、簡易課税制度の適用を受けられません。事前に届出書を提出している場合であっても適用対象外となります。

国税庁のタックスアンサーNo.6505(令和7年4月1日現在法令等)によると、国外事業者とは所得税法第2条第1項第5号に規定する非居住者である個人事業者、および法人税法第2条第4号に規定する外国法人を指します。

「恒久的施設」とは、一般的に「PE」(Permanent Establishment)と略称されており、国内にある事業の管理を行う場所、支店、事務所、工場、作業場もしくは鉱山その他の天然資源を採取する場所またはその他事業を行う一定の場所などを指します。詳しくは国税庁のNo.2883「恒久的施設(PE)(令和元年分以後)」に定められています。

令和6年9月30日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出している場合であっても、令和6年10月1日以後に開始する課税期間の初日において恒久的施設(PE)を有しない場合には、簡易課税制度の適用はありません。

よくある質問

簡易課税制度を選択できる事業者の売上基準はいくらですか?

基準期間における課税売上高が5,000万円以下の課税事業者が簡易課税制度を選択できます。基準期間とは個人事業者の場合は前々年、法人の場合は原則として前々事業年度を指します。

基準期間の課税売上高が5,000万円を超える課税期間については、届出書を提出していても簡易課税制度は適用されません。

卸売業や小売業のみなし仕入率は何パーセントですか?

卸売業である第1種事業のみなし仕入率は90%、小売業である第2種事業のみなし仕入率は80%です。農業・林業・漁業のうち飲食料品の譲渡に係る事業も第2種事業に含まれ80%が適用されます。

飲食料品の譲渡に係る事業を除く農業・林業・漁業や鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業および水道業は第3種事業に該当し、みなし仕入率は70%となります。

サービス業や不動産業のみなし仕入率は何パーセントですか?

サービス業(飲食店業に該当するものを除く)や運輸通信業、金融業および保険業が該当する第5種事業のみなし仕入率は50%、不動産業である第6種事業のみなし仕入率は40%です。

飲食店業は第5種事業から除かれており、第1種事業、第2種事業、第3種事業、第5種事業および第6種事業以外の事業として第4種事業(みなし仕入率60%)等に該当します。

複数の事業を営んでいて区分経理をしていない場合はどうなりますか?

2種類以上の事業を営む事業者が課税売上げを事業ごとに区分していない場合、その区分をしていない部分については営んでいる事業のうち一番低いみなし仕入率が適用されます。

仕入控除税額が低く計算されるのを防ぐためには、日々の帳簿づけの段階から事業区分ごとに課税売上高を区分して記帳することが不可欠です。

簡易課税制度を一度選択した後にやめることはできますか?

事業を廃止した場合を除き、「消費税簡易課税制度選択届出書」の効力が生ずる課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出してやめることはできません。

適用をやめようとする場合は、やめようとする課税期間の初日の前日までに納税地の所轄税務署長に不適用届出書を提出する必要があります。

簡易課税制度のみなし仕入率と事業区分のまとめ

簡易課税制度は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することで適用でき、第1種事業(90%)から第6種事業(40%)までの事業区分に応じたみなし仕入率を用いて仕入れに係る消費税額を算出できます。2種類以上の事業を営む場合でも、1種類の事業の課税売上高が全体の75パーセント以上を占めるときなどは特例計算を利用できます。

一度選択すると事業廃止を除き2年間の継続適用が求められるため、事業の業種区分や将来の設備投資計画を考慮した上で選択することが重要です。適格請求書発行事業者の登録や2割特例からの移行に伴う届出期限の特例も存在するため、適用要件と手続きの期限を正しく把握して申告を行いましょう。

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