中小法人の法人税率の軽減とは?適用対象と所得区分を確認

一人会社・中小法人の経営者。法人化後の税額を見積もりたい人が、軽減税率の対象判定と適用条件を確認するためのガイド

著者: アキスケ

ひと言でわかる

中小法人等には、所得区分や適用除外に注意しながら法人税の軽減税率が適用される場合があります。法人の区分を先に確認しましょう。

法人化を果たした一人会社や中小法人の経営者は、決算期を迎えるにあたって自社に適用される法人税率の確認が必要になります。中小法人等には、所得区分や適用除外に注意しながら法人税の軽減税率が適用される場合があります。法人の区分を先に確認しましょう。

法人税法における普通法人のうち、期末の資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人は原則として中小法人に区分されます。軽減税率の適用対象となる中小法人等に該当するかどうかは、単に自社の資本金の額だけでなく、親会社や株主の資本規模、完全支配関係の有無によっても判定が分かれます。

中小法人等に対する軽減税率の特例措置では、所得金額のうち年800万円以下の金額に対する税率が低く設定されています。ただし、事業年度の所得規模に応じた税率の変動や、過去の所得実績に基づく適用除外事業者の判定が存在するため、適用要件を体系的に把握しておく必要があります。

自社の税負担を適正に見積もり健全な財務基盤を築くためには、別表一における中小法人の判定基準や所得区分の仕組みを正しく理解することが不可欠です。一人会社の設立を行ったばかりの経営者にとっても、税率の判定フローを確認しておくことは事業運営の基礎となります。

中小法人の法人税率にはどのような軽減措置が定められているか

中小法人等に対しては、所得金額のうち年800万円以下の金額に対する税率について軽減税率の特例措置が適用されます。本則の税率19%から15%又は17%へ税率が軽減される仕組みが設けられています。

法人税額を計算するにあたり、軽減税率が適用される中小法人等とは、一定の普通法人である中小法人、一般社団法人等(一定の特定労働者協同組合を除きます)、人格のない社団等、公益法人等(一般社団法人等を除きます)、協同組合等を指します。特定労働者協同組合のうち当期末における資本金の額又は出資金の額が1億円を超えるものは、法人税率の軽減措置を適用できません。

軽減税率の特例措置における適用税率は事業年度の所得規模によって異なります。令和7年4月1日以後に開始する事業年度から、所得金額が年10億円を超える事業年度については、所得金額のうち年800万円以下の金額に適用される税率は17%となります。年10億円以下の事業年度であれば、年800万円以下の金額に対する税率は15%となります。

ただし、適用除外事業者に該当する場合には、軽減税率の特例措置は適用されません(措置法42の3の2)。中小法人等に該当する場合であっても、特例税率の適用を受けるためには所得区分ごとの金額基準と適用除外事業者の要件を同時に満たす必要があります。

軽減税率の対象となる中小法人の判定基準はどこか

普通法人が軽減税率の適用される中小法人に該当するかどうかは、当期末における資本金の額又は出資金の額が1億円以下であるか、および大法人との完全支配関係が存在しないかによって判定します。資本又は出資を有しない普通法人も判定の対象に含まれます。

資本金の額又は出資金の額が1億円を超える普通法人は非中小法人と判定されます。当期末における資本金の額又は出資金の額が1億円以下の普通法人、または資本若しくは出資を有しない普通法人であっても、以下のいずれかに該当する法人は中小法人から除外され、非中小法人として扱われます。

  • 相互会社
  • 大法人との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人
  • 普通法人との間に完全支配関係がある全ての大法人が有する株式及び出資の全部をその全ての大法人のうちいずれか一の法人が有するものとみなした場合において、そのいずれか一の法人とその普通法人との間にそのいずれか一の法人による完全支配関係があることとなるときのその普通法人(大法人との間に完全支配関係がある普通法人を除きます)
  • 投資法人
  • 特定目的会社
  • 受託法人

判定における大法人とは、資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人、相互会社(外国相互会社を含みます)、受託法人を指します。普通法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する者のいずれかに大法人が含まれている場合には、大法人による完全支配関係があるとみなされます(16−5−1)。

普通法人との間に完全支配関係がある法人が外国法人である場合、その外国法人が資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人に該当するかどうかは、事業年度終了の日の電信売買相場の仲値により換算した円換算額により判定されます(16−5−2)。

法人区分と軽減税率の特例措置における適用条件の対比

中小法人の判定および適用される法人税率は、資本規模、株主構成、事業年度の所得金額に応じて明確に区分されています。判定条件ごとの区分を把握することが適切な税額計算の前提となります。

法人区分・条件 所得金額の区分 適用税率 特例適用の可否・留意事項
期末資本金1億円以下の中小法人等(年所得10億円以下) 年800万円以下の金額 15% 軽減税率の特例措置が適用(適用除外事業者を除く)
期末資本金1億円以下の中小法人等(令和7年4月1日以後開始事業年度・年所得10億円超) 年800万円以下の金額 17% 軽減税率の特例措置が適用(適用除外事業者を除く)
中小法人等(本則税率) 年800万円以下の金額 19% 特例措置が適用されない場合の法66②③⑤の税率
期末資本金1億円超の普通法人(非中小法人) 全所得金額 本則税率 軽減税率の適用対象外
資本金5億円以上の大法人による完全支配関係がある普通法人 全所得金額 本則税率 中小法人から除外され軽減税率は非適用
適用除外事業者に該当する中小法人 全所得金額 本則税率 軽減税率の特例措置は適用されない(措置法42の3の2)

会社を設立する際や事業組織を再編する際には、合同会社と株式会社の違いなどの法人形態だけでなく、出資金や資本金の額を1億円以下に設定するかどうかによって税務上の取り扱いが大きく変わる点に留意が必要です。

自社が中小法人に該当する場合であっても、事業年度終了時における所得金額の規模や過去の平均所得金額の推移によって適用される税率が変わるため、決算ごとの正確な区分判定が求められます。

別表ごとの中小法人等の判定基準にはどのような違いがあるか

法人税申告における中小法人や中小企業者の判定は、別表一の税率判定だけでなく、特定同族会社の判定や欠損金の控除限度額の判定など、各別表の目的に応じてそれぞれ規定されています。

別表二及び三(一)における特定同族会社の判定(法67①②)では、被支配会社に該当する普通法人のうち、当期末における資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人が判定対象となります。被支配会社とは、会社の株主等の1人並びにこれと特殊の関係のある個人及び法人がその会社の発行済株式又は出資の総数又は総額の100分の50を超える数又は金額を有する場合等における会社をいいます(法67②、令139の7)。特定同族会社の判定においては適用除外事業者の判定は必要ありません。

別表七(一)における中小法人等の判定では、中小法人等に該当する場合に欠損金額の控除限度額が控除前所得金額となります(法57⑪)。対象となるのは普通法人、公益法人等、協同組合等、人格のない社団等であり、投資法人、特定目的会社及び受託法人以外の法人で期末資本金が1億円以下であることなどが求められます。この判定においても適用除外事業者の判定は不要です。

役員への給与設定や事業運営の設計を行う際には、役員報酬の決め方によって当期の所得金額や将来の繰越欠損金の利用状況が影響を受けるため、各別表の適用関係を整理しておくことが重要です。

貸倒引当金や交際費等の損金算入における中小判定の条件は何か

中小企業者等や中小法人等に該当する場合、貸倒引当金の繰入れや交際費等の損金算入において税務上の優遇措置を利用することができます。

別表十一(一)及び(一の二)における中小企業者等の判定では、中小企業者等に該当する場合、一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入限度額の計算において法定繰入率を適用することができます(措置法57の9、措置法令33の7④)。ただし、中小法人にあっては、適用除外事業者に該当する場合には法定繰入率を適用することができません。公益法人等、協同組合等、人格のない社団等については適用除外事業者の判定は不要です。

別表十五における中小法人等の判定では、中小法人等に該当する場合に交際費等の損金算入限度額の計算上、定額控除限度額を適用することができます(措置法61の4②)。資本又は出資を有しない法人、公益法人等、人格のない社団等、外国法人については、当期末における貸借対照表上の簿価純資産価額に相当する額の100分の60に相当する金額等が1億円以下であるかどうかが判定基準となります。別表十五の判定では適用除外事業者の判定は必要ありません。

中小法人の特例措置は複数の別表にまたがって個別の判定ルールが設定されているため、自社の資本関係や事業内容に応じた適用条件の精査が欠かせません。

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適用除外事業者の基準と判定手順はどうなっているか

適用除外事業者とは、判定対象年度開始の日前3年以内に終了した各基準年度の所得金額の合計額を各基準年度の月数の合計数で除し、これに12を乗じて計算した金額が15億円を超える法人をいいます(措置法42の4⑲八、措置法令27の4⑱~㉒)。

適用除外事業者に該当する場合、中小法人であっても法人税の軽減税率の特例措置(措置法42の3の2)や中小企業向け租税特別措置の適用を受けることができなくなります。

判定項目・計算ステップ 内容および計算式 除外または調整の事由
設立年数の確認 設立の日の翌日以後3年を経過していない法人 原則として適用除外事業者に非該当
基準年度の所得金額 判定対象年度開始前3年以内に終了した各事業年度の所得金額(別表一の金額等・マイナスは0) 欠損金の繰戻し還付の基礎となった欠損金相当額を控除
平均所得金額の計算 (基準年度の所得金額の合計 − 繰戻し還付の欠損金相当額の合計)÷ 各基準年度の月数合計 × 12 合計月数が36月超の場合は36月相当で調整計算を実施
調整計算が必要な事由 特定合併等の実施、公益法人等・人格のない社団等該当、外国法人該当、連結法人該当 合併等調整額や加算対象連結所得金額を加算して平均所得金額を算出
適用除外事業者の判定基準 算出された平均所得金額が15億円を超える場合 「該当」となり軽減税率の特例措置等は適用不可

法人事業の成長に伴い所得規模が拡大している企業では、法人化のタイミングや過去3年間の所得推移が将来の税務上の優遇措置にどのような影響を与えるかをあらかじめ確認しておくことが推奨されます。

中小企業向け租税特別措置の対象となる中小企業者の判定要件とは

中小企業者等の試験研究費の額に係る法人税額の特別控除(別表六(十))や少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(別表十六(七))など、中小企業者向けに設けられた各種租税特別措置を適用するには、中小企業者の判定基準を満たす必要があります。

中小企業向けの租税特別措置における判定では、大規模法人の保有する株式数等の明細を確認します。大規模法人とは、次の法人をいい、中小企業投資育成株式会社は除かれます。

  • 資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人
  • 資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人
  • 大法人(資本金5億円以上の法人、常時使用従業員数1,000人超の相互会社・外国相互会社、受託法人)との間に完全支配関係がある普通法人
  • 普通法人との間に完全支配関係がある全ての大法人が有する株式等の全部をいずれか一の法人が有するものとみなした場合に完全支配関係があることとなるときの普通法人

その法人の株主である大規模法人のうち所有割合の最も多いものから順次記載し、単一の大規模法人が株式等の1/2以上を保有している場合や、複数の大規模法人が合わせて2/3以上を保有している場合には、中小企業者向け租税特別措置の対象外となります。

ただし、期末資本金1億円以下の法人が令和7年4月1日以後に中小企業投資促進税制等の対象資産を取得等する場合において、農地法第2条第3項に規定する農地適格所有法人であり、発行済株式等の1/2超が農林漁業法人等投資円滑化法の承認会社に属しているときは、中小企業者に該当することとなります(適用除外事業者に該当する場合を除きます)。

将来的な税務負担や設備投資に伴う影響を事前にシミュレーションする際には、法人化シミュレーションなどのツールを利用して自社の資本構成や税制優遇の適用可否を把握することが役立ちます。

よくある質問

期末の資本金が1億円以下なら必ず軽減税率が適用されますか?

期末資本金が1億円以下であっても、大法人による完全支配関係がある場合や適用除外事業者に該当する場合には軽減税率の特例措置は適用されません。

親会社が資本金の額又は出資金の額が5億円以上である大法人に該当し、発行済株式等の全部を直接又は間接に保有されている普通法人は中小法人から除外されます。また、過去3年以内の平均所得金額が15億円を超える適用除外事業者に該当する場合も、軽減税率の特例措置は適用されなくなります。

所得が年800万円を超える部分の法人税率はどうなりますか?

中小法人等に対する軽減税率の特例措置が適用されるのは、事業年度の所得金額のうち年800万円以下の区分のみです。

所得金額のうち年800万円を超える部分に対しては、軽減税率ではなく本則の税率が適用されます。年800万円以下の部分については、事業年度の総所得規模に応じて15%または17%の税率が適用されます。

設立して3年以内の法人は適用除外事業者に該当しますか?

設立の日の翌日以後3年を経過していない法人については、原則的には適用除外事業者に該当しません。

適用除外事業者の判定は前3年以内に終了した各事業年度の平均所得金額をもとに行うため、設立後3年を経過していない期間は原則として非該当として扱われます。ただし、特定合併等に係る合併法人等に該当する場合など、一定の事由に該当する場合には調整計算が必要となります。

特定同族会社の判定でも適用除外事業者の確認は必要ですか?

別表二及び三(一)における特定同族会社の判定では、適用除外事業者の判定を行う必要はありません。

特定同族会社の判定においては、会社が被支配会社に該当するかどうか、当期末の資本金の額又は出資金の額が1億円以下であるか、大法人による完全支配関係があるかという基準に基づいて判定が行われます。

令和7年4月1日以後に開始する事業年度で税率17%が適用されるのはどのような場合ですか?

令和7年4月1日以後に開始する事業年度において、所得金額が年10億円を超える事業年度に該当する場合、年800万円以下の金額に適用される税率が17%となります。

所得金額が年10億円以下の中小法人等については、年800万円以下の金額に対する税率は引き続き15%が適用されます。事業年度ごとの所得水準に応じて年800万円以下の適用税率が15%と17%に分かれます。

中小法人の軽減税率を正しく適用するための確認手順

中小法人に対する法人税率の軽減措置を適正に適用するためには、まず当期末における資本金の額又は出資金の額が1億円以下であるか、また株主構成において資本金5億円以上の大法人による完全支配関係が存在しないかを確認します。

続いて、事業年度の所得金額のうち年800万円以下の部分を把握し、令和7年4月1日以後に開始する事業年度における所得金額が年10億円を超えているかどうかに応じて、適用される特例税率(15%又は17%)を特定します。

さらに、前3年以内の各事業年度における平均所得金額が15億円を超えていないかを確認し、適用除外事業者に該当しないことを確かめることで、軽減税率の特例措置に基づいた適正な法人税申告書を作成することが可能となります。