年金の繰上げ受給と繰下げ受給の損益分岐点年齢と増減率の比較
老齢年金を何歳から受け取るか迷っている人向け。年金を何歳からもらうのが一番得かの増減率と損益分岐点を知りたい
ひと言でわかる
年金受給は60歳から繰上げ(月0.4%減額)または最長75歳まで繰下げ(月0.7%増額)でき、平均余命と健康状態を考慮した損益分岐点から選択する
老齢年金を何歳から受給し始めるべきか迷っている人は、受給開始時期を前倒しする繰上げ受給の仕組みと減額率を正確に把握する必要があります。老齢基礎年金および老齢厚生年金は、原則として65歳から受け取ることができますが、受給権者が希望すれば60歳から65歳になるまでの間に繰り上げて受け取ることができ、減額された年金額は一生涯変わりません。
日本年金機構が2024年8月19日に更新した案内によると、年金の繰上げ受給を請求した場合、請求を行った時点に応じて年金額が減額されます。ひと月当たりの減額率は昭和37年4月2日以降生まれの方であれば0.4%(最大24%)、昭和37年4月1日以前生まれの方であれば0.5%(最大30%)となっており、生涯にわたって減額された年金を受け取り続けることになります。
老齢年金の繰上げ請求を行った場合、請求した日の翌月分から年金が支給されます。しかし、一度提出した繰上げ請求を取り消すことはできず、国民年金の任意加入や保険料の追納ができなくなるほか、障害年金や遺族年金、雇用保険の給付との調整など、制度上の制限を受けることになります。
受給開始時期を選択するにあたっては、減額される割合だけでなく、自身の健康状態や退職後の家計収支、受けられる各種給付との関係を慎重に比較検討することが求められます。将来の手取り額や生活費の見通しを立てる際には、手取り額の計算ガイドなども参考にしながら、繰上げ受給による影響を正しく評価する必要があります。
老齢年金は希望すれば60歳から65歳になるまでの間に繰上げて受給できる
公的年金制度における老齢基礎年金および老齢厚生年金は、受給権者が希望すれば60歳から65歳になるまでの間に繰り上げて受給を開始することができます。公的年金の本来の受給開始年齢は原則として65歳ですが、早期に退職した方や生活資金を早めに確保したい方のために、受給時期を前倒しできる繰上げ受給の制度が設けられています。
日本年金機構の規定において、老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給権を有している場合は、原則として両方の年金を同時に繰上げ請求する必要があります。老齢基礎年金のみ、あるいは老齢厚生年金のみを個別に繰り上げて受給することは原則として認められていません。
繰上げ受給の手続きを行った場合、年金の支給は請求した日の翌月分から開始されます。請求を行った月までの年金が遡って支給されることはなく、申請手続きが受理された翌月分から減額された額での支払いが始まります。
繰上げ受給を選択した際に注意すべき点は、繰上げ請求をした時点に応じて決定された減額率が生涯にわたって継続することです。65歳に到達したからといって本来の満額受給に戻ることはなく、減額された年金額を受け取り続けることになります。
繰上げ受給による減額は、老齢基礎年金(振替加算額を除く)および老齢厚生年金(加給年金額を除く)のそれぞれに対して計算されます。全部繰上げに該当する場合、双方の年金額に対して同一の減額率が乗じられる仕組みとなっています。
昭和37年4月2日以降生まれはひと月当たり0.4%減額される
昭和37年4月2日以降に生まれた方の繰上げ減額率は、ひと月当たり0.4%で計算されます。この減額率は、繰上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数に0.4%を乗じることによって算出されます。
昭和37年4月2日以降生まれの方が各年齢で繰上げ請求を行った場合の減額率は、最大で24%となります。日本年金機構が公表している昭和37年4月2日以降生まれの方を対象とした請求時年齢ごとの減額率は以下の表の通りです。
| 請求時の年齢 | 割合 |
|---|---|
| 60歳 | 24.0% |
| 61歳 | 19.2% |
| 62歳 | 14.4% |
| 63歳 | 9.6% |
| 64歳 | 4.8% |
上の表に示されている通り、60歳で請求した場合は24.0%の減額となり、61歳では19.2%、62歳では14.4%、63歳では9.6%、64歳では4.8%の減額となります。減額率は月単位で計算されるため、各年齢の到達月からの経過月数に応じて0.4%ずつ細かく変動します。
全部繰上げの場合、計算された減額率は老齢基礎年金の額(振替加算額を除く)および老齢厚生年金の額(加給年金額を除く)の双方に適用されます。生涯にわたって受取額が減額されるため、申請を行う月を慎重に選定する必要があります。
繰上げ請求を行う月数やご自身の正確な年齢を把握したい場合は、年齢計算ツールを活用して到達日までの月数を確認しておくことが推奨されます。
昭和37年4月1日以前生まれはひと月当たり0.5%減額される
昭和37年4月1日以前に生まれた方の繰上げ減額率は、ひと月当たり0.5%で計算されます。生年月日が昭和37年4月1日以前であるか、昭和37年4月2日以降であるかによって適用される基準が異なります。
昭和37年4月1日以前生まれの方が60歳で全部繰上げの請求を行った場合、減額率は最大で30%に達します。日本年金機構が公表している昭和37年4月1日以前生まれの方の請求時年齢ごとの減額率は以下の表の通りです。
| 請求時の年齢 | 割合 |
|---|---|
| 60歳 | 30.0% |
| 61歳 | 24.0% |
| 62歳 | 18.0% |
| 63歳 | 12.0% |
| 64歳 | 6.0% |
上の表の通り、昭和37年4月1日以前生まれの方は60歳で30.0%、61歳で24.0%、62歳で18.0%、63歳で12.0%、64歳で6.0%の減額となります。ひと月当たりの減額率が0.5%となるため、昭和37年4月2日以降生まれの方(ひと月当たり0.4%)と比較して減額される割合が大きくなります。
老齢年金を満額で受け取る場合と繰上げて減額された額で受け取る場合では、将来的な受取総額に大きな違いが生じます。公的年金だけでなく個人型確定拠出年金であるiDeCoなどの老後資金の受取計画と合わせて、いつ年金を請求すべきかを総合的に判断することが重要です。
減額率は老齢基礎年金と老齢厚生年金それぞれについて減額され、減額は生涯続きます。減額率の基準が生年月日によって分かれている点を確認した上で、年金の受取計画を立てる必要があります。
65歳に達する日の計算は年齢計算に関する法律に基づく
公的年金における年齢の計算は、「年齢計算に関する法律」に基づいて厳密に行われます。この法律の定めにより、人は誕生日の前日に当該年齢に達するものとみなされます。
日本年金機構の規定例によると、4月1日生まれの方が65歳に達した日は、誕生日の前日である3月31日となります。したがって、4月1日生まれの方が65歳に到達する月は3月となり、繰上げ月数の計算基準も3月を基点として取り扱われます。
繰上げ減額率の計算式は「減額率=減額率(0.4%または0.5%)×繰上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数」となっています。そのため、65歳に達する日が誕生日の前日であるという法律上のルールを理解していなければ、計算される月数に差異が生じる可能性があります。
誕生日の当日に手続きを行う場合と誕生日の前日に手続きを行う場合では、月数のカウントが異なる場合があります。繰上げ受給の申請時期を検討する際は、法律上の年齢到達日と請求月の関係を事前に確認しておくことが適切です。
繰上げ請求を行うと請求の取消しや国民年金の追納はできない
老齢年金を一度繰上げ請求した後は、繰上げ請求を取り消すことは一切できません。請求を行った後に生活環境や健康状態が変化した場合でも、元の受給権に戻したり減額率を変更したりすることは不可能です。
また、老齢年金を繰上げ請求すると、国民年金の任意加入や保険料の追納ができなくなります。過去に保険料の免除や納付猶予を受けていた期間がある場合でも、繰上げ請求の手続きを行った後は追納によって受取額を増やす手段が失われます。過去の免除期間の取り扱いについては、事前に国民年金の免除制度を確認し、追納の可否を検討しておく必要があります。
共済組合加入期間がある方については、共済組合から支給される老齢年金についても原則として同時に繰上げ請求することになります。別々に請求時期を分けることは原則として認められません。
さらに、繰上げ請求を行うと厚生年金基金から支給される年金も減額される場合があります。老齢厚生年金の繰上げ請求をした場合は、厚生年金保険の長期加入者や障害者の特例措置を受けることができなくなります。老齢厚生年金や退職共済年金を受給中の方が繰上げ請求すると、これらの年金に定額部分の支給がある場合は定額部分が支給停止されます。
在職中の給料や雇用保険の給付により老齢厚生年金が支給停止になる
65歳になるまでの間に雇用保険の基本手当や高年齢雇用継続給付が支給される場合は、老齢厚生年金の一部または全部の年金額が支給停止となります。ただし、老齢基礎年金については雇用保険の給付による支給停止の対象とはならず、支給されます。
また、厚生年金保険に加入して勤務を継続した場合のほか、国会議員や地方議員になった場合には、給与や賞与の額に応じて老齢厚生年金の一部または全部が支給停止となる場合があります。この場合においても、繰上げ請求した老齢基礎年金は支給停止されません。
退職後や繰上げ受給中に就労して給料を得る場合、老齢厚生年金が全額または一部支給停止となる可能性があります。給与水準や雇用保険の受給状況と年金額の関係をあらかじめ把握しておくことが重要です。
繰上げ受給によって年金受給を開始した場合でも、就労形態や他の社会保険給付との関係によって手取り額が変わるため、事前の確認が不可欠となります。
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遺族年金や障害年金および寡婦年金の受給権に制限が生じる
繰上げ請求した老齢年金は、65歳になるまでの間、遺族厚生年金や遺族共済年金などの他の年金と併せて受給することができません。双方の受給要件を満たしている場合であっても併給は認められず、いずれかの年金を選択して受給することになります。
繰上げ請求した日以後は、国民年金の寡婦年金が支給されなくなります。繰上げ請求の時点で既に寡婦年金を受給中であった方は、繰上げ請求を行った日をもって寡婦年金の権利がなくなります。
さらに、繰上げ請求した日以後は事後重症などによる障害基礎年金や障害厚生年金を請求することができなくなります。持病がある方や治療中の病気がある方は、繰上げ請求を行うことで障害年金の請求権が制限されるため、慎重な判断が求められます。
このように、繰上げ受給の請求は単に老齢年金の受取を早めるだけでなく、他の公的年金給付の受給資格にも直接的な制限を及ぼします。公的年金制度の全体像と自身の健康状態を考慮した上で判断を行う必要があります。
特別支給の老齢厚生年金に該当する場合は一部繰上げの計算式が適用される
特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢の特例に該当している方が、特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢到達前に繰上げ請求をした場合は、一部繰上げの扱いとなり、所定の計算式によって年金額が決定されます。
特例に該当しない方の老齢基礎年金の繰上げは全部繰上げとなり、老齢基礎年金の額(振替加算額を除く)および老齢厚生年金の額(加給年金額を除く)に所定の減額率を乗じて算出されます。一方、特別支給の老齢厚生年金を受給できる方の老齢厚生年金の減額率は、特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢に達する日の前月までの月数で計算されます。
日本年金機構の資料において、特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢が63歳の者の例として示されている計算方法は以下の通りです。
- 繰上げ支給の老齢厚生年金額: 報酬比例部分の額-(報酬比例部分の額×図中1×0.5%※)
- 繰上げ支給の老齢基礎年金額: 老齢基礎年金額×(図中1÷図中2)×(1-0.5%※×図中2)
- 繰上げ調整額: 定額部分の額×{1-(図中1÷図中2)}
※上記の計算式における減額率について、昭和37年4月2日以降生まれの方は0.4%となります。特別支給の老齢厚生年金の対象となる方は、自身の受給開始年齢と一部繰上げの計算要領を確認した上で手続きを行う必要があります。
繰上げ受給を希望する場合は、65歳までの繰上げ受給を希望する時期に年金事務所で手続きを行います。退職に伴う公的年金の受け取りやその後の税務申告については、退職した年の確定申告や確定申告の解説を参考に準備を整えることが推奨されます。
よくある質問
繰上げ受給を請求した後に取り消すことはできますか?
老齢年金を一度繰上げ請求した後は、繰上げ請求を取り消すことは一切できません。
日本年金機構の定めにより、請求時に決定した減額率は生涯にわたって継続し、後から受給開始を遅らせたり通常の受取額に戻したりすることは認められていません。
老齢基礎年金だけを繰上げて受給することはできますか?
原則として老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時に繰上げ請求をする必要があります。
どちらか一方の年金のみを選択して繰上げ受給を請求することは原則としてできず、両方の年金を同時に前倒しして受給することになります。
繰上げ受給をすると国民年金保険料の追納はできなくなりますか?
老齢年金を繰上げ請求すると、国民年金の任意加入や保険料の追納はできなくなります。
過去に免除や猶予の適用を受けていた期間がある場合でも、繰上げ請求の手続きを行った日以後は追納による増額が不可能となります。
繰上げ受給中に病気やけがをした場合、障害年金を請求できますか?
繰上げ請求をした日以後は、事後重症などによる障害基礎年金や障害厚生年金を請求することができなくなります。
治療中の病気や持病がある方は、繰上げ請求を行うことで本来受けられるはずだった障害年金の受給権を失う可能性があるため、手続きの前に慎重な検討が必要です。
繰上げ受給中に遺族年金を受け取ることはできますか?
繰上げ請求した老齢年金は、65歳になるまでの間、遺族厚生年金や遺族共済年金などの他の年金と併せて受給することはできず、いずれかの年金を選択することになります。
65歳に達するまでの期間は両方の年金を同時に受け取ることができないため、受給額や生活費の観点から年金を選択する必要があります。
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