青色申告の赤字(純損失)の3年間繰越控除と前年繰戻し還付の手続き
事業で損失・赤字が出た個人事業主向け。事業の赤字を繰り越して翌年の税金を安くする方法を知りたい
ひと言でわかる
青色申告者は事業所得で生じた赤字(純損失)を翌年以降3年間にわたって繰り越して所得から控除でき、前年に黒字申告していれば税金の還付を受けられる
事業の運営において売上や経費のバランスにより赤字(損失)が発生した場合、確定申告で適切な手続きを行えば税負担を軽減できる仕組みが法令上整備されています。青色申告者は事業所得で生じた赤字(純損失)を翌年以降3年間にわたって繰り越して所得から控除でき、前年に黒字申告していれば税金の還付を受けられます。
日本の所得税は、納税者が自ら税法に従って所得金額と税額を正しく計算し納税するという申告納税制度を採っています。1年間(1月1日から12月31日までの間)に生じた所得金額を正しく計算し申告するためには、収入金額や必要経費に関する日々の取引の状況を帳簿に記帳し、取引に伴い作成したり受け取ったりした書類を保存しておく必要があります。
一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しい申告をする方については、所得金額の計算などについて有利な取扱いが受けられる青色申告の制度が設けられています。青色申告をすることができる方は、不動産所得、事業所得、山林所得のある方です。
事業所得の赤字は翌年以降3年間にわたって繰り越せるのか
青色申告者は、事業所得などに損失(赤字)の金額が生じた場合、損益通算の規定を適用してもなお控除しきれない純損失の金額を翌年以後3年間にわたって繰り越して各年分の所得金額から控除できます。
純損失とは、事業所得などの金額の計算上生じた損失(赤字)のうち、他の各種所得の金額との間で損益通算を行っても控除しきれずに残った部分の金額を指します。申告納税制度においては、毎年の所得金額を正しく計算して納税することが基本ですが、青色申告を行っている場合には、単年で生じた純損失を翌年以後に繰り越す特典が認められています。
純損失の繰越しが適用されると、赤字が出た年の翌年以後の3年間に所得(黒字)が生じた際、その所得金額から前年以前から繰り越された純損失の金額が順次控除されます。これにより、翌年以後の課税対象となる所得金額が減少し、各年分の所得税額を抑えることが可能になります。
純損失の繰越控除の適用を受けることができる対象者は、不動産所得、事業所得、山林所得を生ずべき業務を行っている青色申告者です。この取扱いは、正規の簿記または簡易な記帳による帳簿書類の備付けと日々の記録を行っている青色申告者に認められた主要な特典の1つです。
特定非常災害による損失では繰越期間が5年間に延長されるのか
令和5年4月1日以降に特定非常災害の指定を受けた災害により純損失が生じた場合、特定被災事業用資産の損失割合などの条件を満たすことで、純損失の繰越控除期間が通常の3年間から5年間へと延長されます。
特定非常災害とは、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律第2条第1項の規定により特定非常災害として指定された非常災害をいいます。大規模な災害により事業用資産に大きな被害を受けた青色申告者に対しては、税制上の救済措置として純損失の繰越期間を延長する特例措置が適用されます。
繰越控除期間が5年間に延長される対象損失額は、保有する事業用資産の損失割合に応じて以下の2つの区分に分かれます。
- 保有する事業用資産のうち、特定非常災害に指定された災害により生じた損失(特定被災事業用資産の損失)の割合が10パーセント以上である場合、青色申告者についてはその年に発生した純損失の金額の全額について繰越控除期間が3年間から5年間へと延長されます。
- 特定被災事業用資産の損失の割合が10パーセント未満の場合には、特定被災事業用資産の損失による純損失の金額について繰越控除期間が3年間から5年間へと延長されます。
通常の純損失の繰越控除期間と特定非常災害による繰越控除期間の延長措置の違いは以下の通りです。
| 災害の区分 | 特定被災事業用資産の損失割合 | 繰越控除期間 | 対象となる純損失の範囲 |
|---|---|---|---|
| 通常の事業活動による赤字(災害以外) | 適用なし | 3年間 | 純損失の金額の全額 |
| 令和5年4月1日以降の特定非常災害 | 10パーセント以上 | 5年間 | その年に発生した純損失の全額 |
| 令和5年4月1日以降の特定非常災害 | 10パーセント未満 | 5年間 | 特定被災事業用資産の損失による純損失の金額 |
このように、令和5年4月1日以降に発生した特定非常災害による損失については、資産被害の規模(10パーセント以上か10パーセント未満か)に応じて、最長5年間にわたり各年分の所得金額から純損失を控除することができます。
前年も青色申告なら純損失を繰り戻して所得税の還付を受けられるか
前年も青色申告をしている納税者は、純損失の繰越しに代えて、その損失額を生じた年の前年分の所得金額に繰り戻して控除し、前年分の所得税額の還付を受けることができます。
純損失の繰戻しとは、当年に生じた赤字(純損失)を前年の黒字所得から差し引いて前年分の所得税額を再計算し、既に納付した税額との差額の還付を受ける制度です。前年において青色申告により黒字の所得金額を申告して所得税を納付しており、当年に事業所得等で赤字が生じた青色申告者が選択できます。
青色申告者は、事業所得などに純損失が生じた場合、その損失額を翌年以後3年間(特定非常災害の要件を満たす場合は5年間)繰り越して将来の所得から控除する「繰越し」を行うか、前年の所得金額に繰り戻して前年の税金の還付を受ける「繰戻し」を行うかを選択することができます。
なお、還付申告書等を提出する方であっても、最高55万円または最高65万円の青色申告特別控除の適用を受けるためには、その年の確定申告期限(翌年3月15日)までに正規の簿記の原則による記帳に基づいて作成した貸借対照表および損益計算書を確定申告書に添付して、その申告書を提出する必要があります。
青色申告承認申請書の提出期限はいつまでに定められているか
青色申告の承認を受けようとする納税者は、原則として青色申告の承認を受けようとする年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
年度の途中で新規開業した場合や、相続によって業務を承継した場合には、提出期限に関して原則とは異なる期限区分が定められています。その年の1月16日以後に新規に業務を開始した場合は、業務を開始した日から2か月以内に青色申告承認申請書を提出しなければなりません。
相続により業務を承継した場合の提出期限は、被相続人(亡くなった方)が白色申告者であったか青色申告者であったか、および死亡の日がいつであるかによって区分されています。
青色申告承認申請書の提出期限の区分は以下の表の通りです。
| 区分番号 | 業務開始・承継等の区分 | 青色申告承認申請書の提出期限 |
|---|---|---|
| (1) | 原則 | 青色申告の承認を受けようとする年の3月15日 |
| (2) | 新規開業した場合(その年の1月16日以後に新規に業務を開始した場合) | 業務を開始した日から2か月以内 |
| (3) | 被相続人が白色申告者の場合(その年の1月16日以後に業務を承継した場合) | 業務を承継した日から2か月以内 |
| (4) | 被相続人が青色申告者の場合(死亡の日がその年の1月1日から8月31日) | 死亡の日から4か月以内 |
| (5) | 被相続人が青色申告者の場合(死亡の日がその年の9月1日から10月31日) | その年12月31日 |
| (6) | 被相続人が青色申告者の場合(死亡の日がその年の11月1日から12月31日) | 翌年2月15日 |
青色申告の承認を受けていた被相続人の業務を承継した場合、被相続人の死亡による準確定申告書の提出期限である相続の開始を知った日の翌日から4か月以内(ただし、その期限が青色申告の承認があったとみなされる日後に到来するときは、その日)までに申請書を提出する必要があります。提出先はいずれの場合も納税地の所轄税務署長です。
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青色申告者の帳簿書類は何年間保存する必要があるか
青色申告者が日々の取引を記録した帳簿および作成・受領した書類は、原則として7年間保存することが定められていますが、一部の書類については5年間の保存でよいとされています。
青色申告の記帳は、年末に貸借対照表と損益計算書を作成することができるような正規の簿記によることが原則です。ただし、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳のような帳簿を備え付けて簡易な記帳をするだけでもよいことになっています。
1年間(1月1日から12月31日までの間)に生じた所得金額を正しく計算し申告するためには、収入金額や必要経費に関する日々の取引の状況を帳簿に記帳し、取引に伴い作成したり受け取ったりした書類を保存しておく必要があります。
原則として7年間保存することとされている帳簿書類に対し、5年間の保存でよい書類には、請求書、見積書、納品書、送り状などがあります。これらの帳簿書類を正しく保存しておくことが、青色申告における各種特典の適用を受けるための基盤となります。
純損失の繰越し以外に青色申告にはどのような特典があるか
青色申告者には、純損失の繰越しや繰戻しのほか、青色申告特別控除、青色事業専従者給与の必要経費算入、貸倒引当金の必要経費算入といった特典が認められています。
青色申告特別控除は、不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいる青色申告者で、これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳し、その記帳に基づいて作成した貸借対照表および損益計算書を確定申告書に添付して、確定申告期限までに提出している場合に最高55万円(令和元年以前は最高65万円)が控除されます。令和2年分以後において、最高55万円の控除を受けられる方が電子帳簿保存またはe-Taxによる電子申告を行っている場合は、最高65万円の控除が受けられます。令和4年分以後は、仕訳帳および総勘定元帳について優良な電子帳簿の要件を満たして電子データによる備付けおよび保存を行い届出書を提出する必要があります。これら以外の青色申告者は、不動産所得、事業所得および山林所得を通じて最高10万円の控除となります。
青色事業専従者給与は、青色申告者と生計を一にしている配偶者やその他の親族のうち、年齢が15歳以上で、その青色申告者の事業に専ら従事している人に支払った給与について、事前に提出された届出書に記載された金額の範囲内で労務の対価として適正な金額であれば必要経費に算入できる特典です。なお、青色事業専従者として給与の支払を受ける方は、同一生計配偶者や扶養親族にはなれません。
貸倒引当金は、事業所得を生ずべき事業を営む青色申告者が、事業の遂行上生じた売掛金、貸付金などの貸金の貸倒れによる損失の見込額として、年末における貸金の帳簿価額の合計額の5.5パーセント以下の金額を貸倒引当金勘定へ繰り入れたときに、その金額を必要経費として認める制度です。金融業の場合は3.3パーセントになります(一括評価)。また、個別の事由に応じた限度額までを繰り入れる個別評価も認められています。
| 特典の名称 | 控除額・算入割合等の基準 | 主な適用要件・対象所得 |
|---|---|---|
| 青色申告特別控除(最高65万円) | 最高65万円 | 不動産所得または事業所得、正規の簿記(複式簿記)、貸借対照表・損益計算書添付、期限内提出、e-Tax電子申告または優良な電子帳簿保存(令和2年分以後) |
| 青色申告特別控除(最高55万円) | 最高55万円 | 不動産所得または事業所得、正規の簿記(複式簿記)、貸借対照表・損益計算書添付、期限内提出(令和元年以前は最高65万円) |
| 青色申告特別控除(最高10万円) | 最高10万円 | 不動産所得、事業所得、山林所得、簡易な記帳等(最高55万円・65万円の要件以外) |
| 青色事業専従者給与 | 届出書記載の適正額 | 生計を一にする配偶者や親族、年齢15歳以上、事業に専ら従事、事前の届出書提出(同一生計配偶者・扶養親族から除外) |
| 貸倒引当金(一括評価) | 5.5パーセント以下(金融業は3.3パーセント) | 事業所得、年末における売掛金・貸付金等貸金の帳簿価額合計額 |
| 純損失の繰越し | 損失額の全額 | 事業所得等の純損失、翌年以後3年間(特定非常災害は最長5年間)所得から控除 |
| 純損失の繰戻し還付 | 前年分所得税額の再計算還付 | 前年も青色申告をしている場合、前年分の所得金額に繰り戻して控除 |
このように、青色申告者には赤字発生時の純損失の繰越し・繰戻しだけでなく、黒字の年における所得控除や家族への給与の経費算入、売掛債権に対する貸倒引当金の計上など、複数の特典が用意されています。
事業廃止などで青色申告を取りやめるときの手続きはどうするか
事業の廃止などにより青色申告書による所得税の申告を取りやめる場合は、取りやめようとする年の翌年3月15日までに「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
青色申告の承認を受けていた事業者が業務を廃止した場合や、申告方法を変更して青色申告を取りやめようとする場合には、法令に基づき所定の届出書を提出する義務があります。
提出先は納税地の所轄税務署であり、提出書類である「所得税の青色申告の取りやめ届出書」に取りやめの理由等を記載して手続きを行います。
よくある質問
青色申告の赤字は最長で何年間繰り越すことができますか?
事業所得などに生じた純損失の金額は、原則として翌年以後3年間にわたって繰り越して所得金額から控除することができます。
ただし、令和5年4月1日以降に特定非常災害の指定を受けた災害により生じた純損失については、保有する事業用資産のうち特定被災事業用資産の損失割合が10パーセント以上である場合はその年に発生した純損失の金額が5年間に延長されます。特定被災事業用資産の損失割合が10パーセント未満の場合には、特定被災事業用資産の損失による純損失の金額について繰越控除期間が3年間から5年間へと延長されます。
前年が黒字で今年が赤字の場合は税金の還付を受けられますか?
前年も青色申告をしている納税者であれば、純損失の繰越しに代えて前年分の所得金額に繰り戻して控除し、前年分の所得税額の還付を受けることができます。
当年に生じた損失額を前年の所得から控除して税額を再計算し、納付済みの所得税額から還付を受ける手続きです。なお、最高55万円または最高65万円の青色申告特別控除の適用を受けるためには、還付申告であっても確定申告期限(翌年3月15日)までに正規の簿記の原則による貸借対照表および損益計算書を添付して申告書を提出する必要があります。
年の途中で新規開業した場合の青色申告承認申請書の提出期限はいつですか?
その年の1月16日以後に新規に業務を開始した場合は、業務を開始した日から2か月以内が青色申告承認申請書の提出期限となります。
青色申告の承認を受けようとする場合の原則的な提出期限はその年の3月15日ですが、1月16日以後の新規開業については開業日から2か月以内に納税地の所轄税務署長へ「青色申告承認申請書」を提出することで青色申告の適用を受けることができます。
青色申告で作成した帳簿や請求書は何年間保存する必要がありますか?
青色申告の帳簿および書類は、原則として7年間保存することが定められています。
ただし、書類の種類によっては5年間の保存でよいものもあります。5年間の保存でよい書類の具体例としては、請求書、見積書、納品書、送り状などが挙げられます。現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳などの帳簿や決算書類は原則通り7年間の保存が必要です。
青色申告特別控除で最高65万円の控除を受けるための要件は何ですか?
不動産所得または事業所得を営む青色申告者が、正規の簿記の原則(複式簿記)により記帳し、貸借対照表および損益計算書を添付した確定申告書を期限までに提出した上で、e-Taxによる電子申告または電子帳簿保存を行う必要があります。
令和2年分以後において最高55万円の控除要件を満たす納税者が、e-Taxによる電子申告を行うか、優良な電子帳簿の要件を満たして仕訳帳および総勘定元帳の電磁的記録の備付け・保存を行い届出書を提出している場合に最高65万円の控除が適用されます。正規の簿記によらない簡易な記帳等の場合は最高10万円の控除となります。
青色申告における赤字・損失処理の要点まとめ
青色申告者は、事業所得などで損失(赤字)が生じた場合に、損益通算を行ってもなお控除しきれない純損失の金額を翌年以後3年間にわたって繰り越して所得から控除できます。令和5年4月1日以降の特定非常災害による損失については、資産被害割合に応じて繰越期間が5年間へと延長される特例があります。
また、前年も青色申告を行っている場合は、繰越しに代えて前年分の所得金額に損失額を繰り戻し、前年分の所得税額の還付を受けることも可能です。
青色申告の適用を受けるためには、原則としてその年の3月15日までに(1月16日以後の新規開業は業務開始日から2か月以内に)青色申告承認申請書を所轄税務署長へ提出し、正規の簿記または簡易な記帳に基づく帳簿書類を原則7年間(請求書等は5年間)保存しておく必要があります。
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