個人事業主の税務調査は何を準備する?事前通知・帳簿・対応の流れ
個人事業主・フリーランス
ひと言でわかる
個人事業主の税務調査では、事前通知の内容を確認し、申告に使った帳簿・請求書・領収書などを対象期間ごとに整理して、質問には事実に沿って回答します。事前通知がない場合もあるため、日頃から記録を整えることが重要です。
個人事業主として事業を営む中で税務署から税務調査の連絡を受けた場合、事前通知の内容や準備すべき書類、当日の対応手順について疑問や不安を抱くことがあります。個人事業主の税務調査では、事前通知の内容を確認し、申告に使った帳簿・請求書・領収書などを対象期間ごとに整理して、質問には事実に沿って回答します。事前通知がない場合もあるため、日頃から記録を整えることが重要です。
税務調査の手続は、国税通則法をはじめとする関係法令に基づいて明確に規定されています。税務当局が納税者に対して質問検査等を行う権限や、帳簿書類等の提示や提出を求める手続、調査日程の調整に関する規定が整備されています。
税務署からの連絡には、法令に基づき特定の課税標準や税額を認定する目的で行われる「調査」のほかに、申告内容の自発的な見直しを要請する「行政指導」の区分が存在します。それぞれの性質を理解し、どのような手続が行われるのかを把握した上で、適切な書類の準備を進める必要があります。
税務調査と行政指導は何が違うのか
税務調査は特定の納税者の課税標準等又は税額等を認定する目的で行われる一連の行為であり、行政指導は申告書の誤りに対して自発的な見直しや修正申告を要請する行為です。税務署の担当者が納税者に対して調査又は行政指導を行う際には、対面、電話、書面等の態様を問わず、具体的な手続に入る前にいずれに当たるのかを明示することとされています。
行政指導は、提出された申告書に計算誤り、転記誤り、記載漏れ及び法令の適用誤り等の誤りがあるのではないかと思われる場合に、納税者に対して自発的な見直しを要請した上で、必要に応じて修正申告書の自発的な提出を要請する手続です。行政指導に基づき納税者が自主的に修正申告書を提出した場合には、延滞税は納付する場合がありますが、過少申告加算税は賦課されません。ただし、当初申告が期限後申告の場合は、無申告加算税が原則5%賦課されます。
調査は、国税に関する法律の規定に基づき、質問検査等を行って申告内容を確認する手続です。証拠資料の収集、要件事実の認定、法令の解釈適用などの一連の行為が行われます。国税通則法第65条第6項に規定する調査通知以後、かつ調査があることにより更正又は決定があるべきことを予知する前にされた修正申告又は期限後申告に対しては、過少申告加算税等が課される規定が設けられています。申告内容や提出時期の確認には、確定申告の期限後申告に関する取扱いも関係します。
事前通知ではどのような事項が連絡されるのか
実地の調査を行う場合には、原則として調査の対象となる納税者に対して、調査開始日前までに相当の時間的余裕をおいて電話等により事前通知が行われます。事前通知においては、実地の調査において質問検査等を行う旨、調査を開始する日時・場所、調査の対象となる税目・課税期間、調査の目的、調査の対象となる帳簿書類その他の物件、調査対象者の氏名又は名称及び住所又は居所、調査担当者の氏名及び所属官署などの事項が通知されます。
事前通知の際には、調査の目的として提出された申告書の記載内容を確認するためであることなどが通知されますが、実地の調査を行う理由については法令上事前通知すべき事項とされていないため説明は行われません。また、調査に要する時間や日数は調査開始後の状況により異なるため、事前通知の時点であらかじめ知ることは困難とされています。調査開始日時に複数の調査担当者が臨場する場合は、代表する者の氏名・所属官署に加えて臨場予定人数が連絡されます。
事前通知事項の内容と取扱いは次の表のとおりです。
| 事前通知事項 | 通知の内容と取扱い |
|---|---|
| 調査開始の日時・場所 | あらかじめ都合を聴取した上で調整されます。やむを得ない事情がある場合は変更を協議できます。 |
| 対象となる税目・課税期間 | 申告内容を確認する税目と課税期間が指定されます。非違が疑われる場合は説明の上で対象が拡大することがあります。 |
| 調査の目的 | 申告書の記載内容を確認する目的などが通知されます。実地調査を行う理由は説明されません。 |
| 対象となる帳簿書類等 | 検査の対象となる帳簿書類その他の物件が示されます。 |
| 調査担当者情報・臨場人数 | 担当者の氏名や所属官署が通知されます。複数名が臨場する場合は代表者氏名と臨場予定人数が連絡されます。 |
事前通知は原則として電話による口頭で行われます。電話による通知が困難と認められる場合は税務当局の判断で書面により行われることがありますが、納税者からの要望に応じて事前通知内容を記載した書面を交付することはありません。
調査の日時や場所は変更できるのか
事前通知を受けた調査開始日時や場所については、合理的な理由がある場合には変更の申出を行うことができます。税務調査の事前通知に際しては、あらかじめ納税者や税務代理人の都合を聴取することとされており、申告業務や決算業務等の事務の繁閑にも配慮して調査開始日時が調整されます。
事前通知が行われた後であっても、通知された日時について一時的な入院、親族の葬儀、業務上やむを得ない事情が生じた場合など、理由が合理的と考えられれば調査開始日時や場所の変更が協議されます。変更を希望する場合の申出方法については法令上の定めがないため、口頭による申出で差し支えないとされています。
税務代理を依頼している税理士が存在する場合、平成26年7月1日以後に行う事前通知については、税務代理権限証書に納税者の同意が記載されていれば税務代理人に対して事前通知が行われます。平成27年7月1日以後については、税務代理人が数人ある場合において代表する税務代理人を定めたときは、代表する税務代理人に対して事前通知を行えば足りることとされています。
調査の過程において、事前通知を受けた対象期間より以前の帳簿書類の提示を求められることがあります。例えば、減価償却費の計上額が正しいかどうかを確認するために資産の取得価額を確認する必要がある場合など、申告内容を確認するために調査担当者が必要と判断したときは対象期間以外の帳簿書類の提示を求められる場合があります。これは対象年度の申告内容を確認するための手続であり、対象外の年度の調査を行っていることにはなりません。
事前通知が行われない実地調査にはどう対応すべきか
実地の調査であっても、法令の規定に従い、一定の要件に該当すると判断された場合には事前通知が行われないことがあります。納税者の申告内容、過去の調査結果、営む事業内容に関する情報その他税務当局が保有する情報に鑑み、事前通知をすると違法又は不当な行為を容易にし正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれがある場合や、国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合が該当します。
事前通知なしで実地調査が行われる場合であっても、調査担当者は身分証明書(国税職務証票の交付を受けている場合は国税職務証票)及び質問検査章を携帯し提示します。調査のために往訪した旨を明らかにした上で、臨場後速やかに調査を行う旨、調査の目的、調査の対象となる税目、調査の対象となる期間、調査の対象となる帳簿書類その他の物件などの事項を説明し、理解と協力を得て調査が開始されます。
法令上、事前通知を行わなかった理由を説明することは義務付けられていません。また、事前通知をしないこと自体は不服申立てを行うことのできる処分には当たらないため、事前通知が行われなかったことについて不服申立てを行うことはできません。
納税者本人に対する調査のほかに、取引先などに対して反面調査が実施される場合があります。取引先等に対する調査を実施しなければ正確な事実の把握が困難と認められる場合に行われるものであり、法令上の事前通知規定はありませんが、運用上は原則としてあらかじめ対象者へ連絡が行われます。反面調査を実施する際は、反面調査である旨が取引先等に明示されます。
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税務調査はフリーランスにも関係があります。備えの選択肢、知っていますか?
税務調査は法人だけのものではなく、個人事業主・フリーランスにも入ることがあります。いざ通知が来てから慌てないために、税務調査の対策・サポートを受けられるメンバーシップにあらかじめ入っておく、という備え方もあります。まずはどんなサポートが受けられるか確認してみましょう。
個人事業主・フリーランス対応 / 事前の備えとして / まずは内容を確認
帳簿書類の提示と提出では何を用意するのか
税務調査において調査担当者が帳簿書類その他の物件の提示や提出を求める際は、法令上認められた質問検査等の範囲において、納税者の理解と協力の下で承諾を得て行われます。正当な理由がないのに帳簿書類等の提示や提出を拒んだり、虚偽の記載をした帳簿書類等を提示・提出した場合には、国税通則法に基づき1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金が科される場合があります。
提示や提出を求められた物件が電磁的記録である場合、提示についてはディスプレイの画面上で調査担当者が確認し得る状態にして示す方法がとられます。提出については、電磁的記録を確認し得る状態でプリントアウトしたものを作成して渡す方法、調査担当者が持参した電磁的記録媒体への記録の保存(コピー)を行う方法、またはe-Tax、オンラインストレージサービス、メールを利用して提出する方法があります。電子データで保存している取引情報については、電子取引データの保存方法やe-Taxによる確定申告の手続に沿って適切に管理された記録を確認できるように準備します。
帳簿書類等の取扱いにおける提示・提出・留置きの違いは次の表のとおりです。
| 手続の区分 | 手続の内容 | 電磁的記録や書類の取扱い |
|---|---|---|
| 提示 | 調査担当者が内容を確認できるように帳簿や書類を示す手続です。 | 電磁的記録の場合はディスプレイの画面上で確認できる状態にして示します。 |
| 提出 | 調査担当者に帳簿や書類を渡す手続です。 | プリントアウト、媒体へのコピー、e-Tax、オンラインストレージ、メール等で提出します。 |
| 留置き(預かり) | 提出を受けた帳簿書類等を税務署等で預かって調査を継続する手続です。 | 承諾を得て実施し「預り証」が交付されます。必要がなくなったときは遅滞なく返還されます。 |
事務所等に十分なスペースがない場合や、帳簿書類等が多量で検査に時間を要する場合などには、帳簿書類等の留置き(預かり)を求められることがあります。留置きは納税者の承諾を得て行うものであり、承諾なく強制的に留め置かれることはありません。留置きが行われる際は預り証が交付され、受領署名が求められます。留め置く必要がなくなったときは、交付された預り証と引換えに遅滞なく書類が返還されます。
調査終了時の説明と修正申告の勧奨にはどう対応するか
実地の調査が終了した結果、更正決定等をすべきと認められないと判断された場合には、税目および課税期間について更正決定等をすべきと認められない旨が書面により通知されます。実地の調査以外の調査において更正決定等をすべきと認められない場合には書面通知は行われませんが、調査が終了した旨が口頭により連絡されます。
調査の結果として更正決定等をすべきと認められる非違がある場合には、納税者に対して税目、課税期間、更正決定等をすべきと認める金額、理由などの非違の内容が原則として口頭で説明されます。納付すべき税額、加算税、延滞税が生じることの説明が行われ、原則として修正申告又は期限後申告が勧奨されます。修正申告に応じるかどうかは納税者の任意の判断であり、勧奨に応じない場合は調査結果に基づき更正等の処分が行われます。修正申告の勧奨に応じなかったことのみをもって不利な取扱いを受けることは基本的にありません。
修正申告書を提出した場合は、その内容について不服申立てを行うことはできませんが、更正の請求を行うことは可能です。修正申告等の勧奨を受ける際には、法的効果を説明した教示文が交付されます。更正の請求を行う場合は、更正の請求書に正しい税額や請求の理由を記載し、事実を証明する書類を併せて提出します。青色申告の手続を行っている個人事業主や、白色申告と青色申告の区分に応じた記帳を行っている場合には、事実に基づいた確認が行われます。
平成23年12月の国税通則法改正により、更正の請求ができる期間は原則1年から5年に延長され、課税庁による増額更正の期間も原則3年から5年に延長されました。また、国税に関する法律に基づく申請に対する拒否処分や不利益処分全体について理由附記が実施される規定が設けられています。
よくある質問
税務調査の事前通知を書面で受け取ることはできますか?
事前通知は原則として電話による口頭で行われるため、納税者からの希望に応じて事前通知内容を記載した書面を交付することはありません。電話による通知が困難と税務当局が認めた場合に限り、当局の判断で書面により通知されることがあります。
事前通知では、調査開始の日時・場所、対象となる税目・課税期間、調査の目的、対象となる帳簿書類等の物件、担当者氏名および所属官署などの事項が伝えられます。
税務調査に記帳を手伝っている家族や知人は立ち会えますか?
税務代理人以外の第三者が調査に立ち会って主張や陳述を行うことは税務代理行為に当たるため認められていません。調査担当者には守秘義務が課されているため、原則として税務代理人以外の立会いは断られます。
ただし、日頃から記帳事務を担当している記帳補助者については、調査を円滑に進めるために調査担当者が必要と認めた範囲で調査の現場に同席することが認められる場合があります。
税務調査で私物の通帳の提示を求められたら断ることはできますか?
調査について必要があるときは、調査担当者は帳簿書類等の提示や提出を求めて検査することができます。事業関連性が疑われる個人名義の預金通帳などがある場合、その提示や提出を求めることは法令上認められた質問検査等の範囲に含まれると考えられています。
提示や提出を求める際には担当者から趣旨の説明が行われます。正当な理由がなく提示や提出を拒んだ場合には、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金が科される規定が存在します。
一度税務調査が終わった後に同じ期間を再調査されることはありますか?
実地の調査が終了して更正決定等をすべきと認められない旨の書面を受け取った場合、原則としてその税目・課税期間について再調査が実施されることはありません。
ただし、実地の調査終了後に取引先の税務調査などによって当初把握されていなかった非違が明らかになった場合など、「新たに得られた情報に照らして非違があると認めるとき」に該当する場合は、既に調査対象となった期間であっても再調査が実施されることがあります。再調査を行う場合も原則として事前通知が行われますが、再調査を行う理由については説明されません。
提示を求められた書類が災害等で滅失している場合はどうなりますか?
帳簿書類等の提示・提出の求めに対して正当な理由なく応じない場合には罰則が科される規定がありますが、災害等により書類が滅失・毀損して直ちに提示・提出することが物理的に困難な場合は正当な理由に該当するものと考えられています。
正当な理由に該当するかどうかは個々の事案に即して具体的に判断されます。書類の保管状況や滅失した経緯について調査担当者に事実を説明することが重要です。