社会保険の扶養から外れる条件と106万・130万円の壁の違い
パートやアルバイトで働く主婦や学生向け。106万と130万の社会保険扶養基準の違いと判定要件を知りたい
ひと言でわかる
社会保険の扶養から外れる基準は、従業員51人以上の特定適用事業所で週20時間以上かつ月額賃金8.8万円以上(年約106万円)または全事業所で年収130万円以上である
配偶者の扶養の範囲内で働くパート・アルバイトにおいて、収入の増加に伴う社会保険料の負担や手取り収入の減少を懸念して就業調整を行う状況が存在します。106万円の壁は従業員50人超の企業で週20時間以上働き月額賃金8.8万円以上になると社会保険加入が生じる壁、130万円の壁は年収130万円以上で被扶養者認定が変わる壁で、令和7(2025)年の年金制度改正法により106万円の壁の賃金要件は令和7(2025)年6月から3年以内に撤廃される予定です。
厚生年金保険および健康保険においては、会社員の配偶者等で一定の収入がない方は、被扶養者(第3号被保険者)として扱われるため、社会保険料の負担が発生しません。しかし、働く方の収入が増加して一定の収入を超えると、社会保険料の負担が発生し、その分手取り収入が減少する現象が生じます。
この手取り収入の減少を回避する目的で労働時間を抑えるなどの就業調整が行われており、その基準となる年収換算で約106万円や130万円という収入基準がいわゆる「年収の壁」と呼ばれています。自身の現在の働き方や勤務先の規模によって直面する壁の種類が異なるため、それぞれの制度の違いを正確に把握することが重要です。
制度の詳細を理解したうえで手取り額の変化を確認したい場合は、年収の壁シミュレーションツールや社会保険料計算ツールを活用することで、具体的な影響を把握できます。
106万円の壁と130万円の壁は何が違うのか
106万円の壁と130万円の壁の根本的な違いは、自身が勤務先で被用者保険(厚生年金保険等)に加入する基準であるか、配偶者等の健康保険における被扶養者(第3号被保険者)の認定から外れる基準であるかという点にあります。106万円の壁は勤務先の規模や労働時間などの条件を満たした場合に自身が社会保険の被保険者となる基準であり、130万円の壁はすべての被扶養者を対象とする収入の認定基準です。
会社員の配偶者等で一定の収入がない方は、国民年金の第3号被保険者および健康保険の被扶養者として扱われるため、個別に保険料を納付する必要がありません。しかし、一定の収入基準を超えると社会保険料の負担が発生し、その分手取り収入が減少します。
106万円の壁は、従業員50人超の企業に勤務し、週20時間以上働き、所定内賃金が月額8.8万円以上(年収換算で約106万円)になる場合に適用されます。この条件を満たすと、配偶者の扶養から外れて自身が勤務先の厚生年金保険等に加入することになります。
一方で130万円の壁は、勤務先の企業規模にかかわらず、年収換算で約130万円以上となった場合に被扶養者の認定基準から外れる基準です。被扶養者認定から外れた場合は、自身で勤務先の社会保険に加入するか、国民健康保険や国民年金に加入することになります。実際の保険料負担額は、加入する制度や標準報酬月額によって異なるため、社会保険料額表の見方もあわせて確認してください。
| 項目 | 106万円の壁 | 130万円の壁 |
|---|---|---|
| 対象となる制度 | 厚生年金保険および健康保険(被用者保険への加入) | 健康保険の被扶養者認定・国民年金第3号被保険者 |
| 主な収入要件 | 所定内賃金が月額8.8万円以上(年収換算で約106万円) | 年間収入が130万円以上(年収換算で約130万円) |
| その他の主な要件 | 従業員50人超企業、週20時間以上の勤務 | 企業規模に関わらず生計維持関係を総合的に判断 |
| 令和7(2025)年の年金制度改正法による方針 | 賃金要件の撤廃(令和7(2025)年6月から3年以内)、企業規模要件の段階的縮小・撤廃 | 被用者保険への適用拡大により「130万円の壁」を意識せず働ける環境の整備 |
106万円の壁を満たす具体的な基準は何か
106万円の壁を満たして厚生年金保険等の加入対象となる基準は、「従業員50人超の企業」において「週20時間以上勤務」し、「所定内賃金が月額8.8万円以上(年収換算で約106万円)」となる場合です。これらすべての条件に該当した場合に、自身が勤務先で被用者保険に加入することになります。
基準となる「従業員数」は、単なる全従業員の人数ではなく、企業の「厚生年金保険の適用対象者数(被保険者数)」で判断されます。そのため、勤務先の企業全体で厚生年金保険に加入している労働者の数が50人を超えるかどうかが要件の判断基準となります。
賃金要件である「所定内賃金が月額8.8万円以上」については、基本給などの所定内賃金を基準として年収換算で約106万円となる金額が設定されています。この基準に達すると、配偶者の扶養内にとどまることができず、被用者保険の保険料負担が発生します。
106万円の壁については大きな制度見直しが進められています。令和7(2025)年の年金制度改正法により、所定内賃金を月額8.8万円以上(年収約106万円)とする賃金要件については、最低賃金の状況を踏まえ令和7(2025)年6月から3年以内に撤廃されることが定められました。
さらに、従業員50人超の企業を対象とする企業規模要件についても、段階的に縮小・撤廃されることとなっています。施策情報においても、令和7(2025)年の年金制度改正法において「106万円の壁」の撤廃などの被用者保険の適用拡大を実施しているとされています。
| 適用要件項目 | 現行の基準 | 制度改正による見直しの内容 |
|---|---|---|
| 企業規模要件 | 厚生年金保険の適用対象者数が50人超の企業 | 段階的に縮小・撤廃される予定 |
| 労働時間要件 | 週20時間以上 | 被用者保険の適用拡大の対象 |
| 賃金要件 | 所定内賃金が月額8.8万円以上(年収換算で約106万円) | 最低賃金の状況を踏まえ、令和7(2025)年6月から3年以内に撤廃予定 |
130万円の壁で被扶養者を維持するための要件は何か
130万円の壁において一時的に年収が130万円以上となった場合でも、被扶養者認定における事業主の証明を活用することで、原則として連続2回までは引き続き扶養に入り続けることが可能です。人手不足などによる労働時間の延長が原因であれば、証明書の提出によって直ちに扶養から外れることを回避できます。
具体的には、毎年の被扶養者認定の際に、人手不足による労働時間延長等に伴い一時的に年収が130万円以上となった場合が対象となります。この際、過去の課税証明書、給与明細書、雇用契約書などに加え、一時的な収入である旨の事業主の証明を添付して手続きを行います。
被扶養者認定における労働契約内容による年間収入の取扱いも導入されています。被扶養者認定時点で労働契約の内容(基本給および諸手当等)によって見込まれる年間収入が130万円未満であり、かつ、他の収入が見込まれず、主として被保険者の収入によって生計を維持していると認められる場合には、原則として被扶養者に該当するものとして取り扱われます。
さらに、「130万円の壁」の対策として、パート・アルバイトなどの方が被用者保険に加入できる事業所の範囲を拡大する取組が、令和7(2025)年の年金制度改正法により進められています。これにより被用者保険への移行が促され、「130万円の壁」を意識せず働くことができる環境の整備が進められています。給与手取りの試算を行いたい場合は、手取り額計算ツールも役立ちます。
| 制度・取扱いの名称 | 主な要件・対象となる状況 | 手続きおよび認定の取扱い |
|---|---|---|
| 被扶養者認定における事業主の証明の活用 | 人手不足による労働時間延長等に伴い一時的に年収が130万円以上となった場合 | 過去の課税証明書、給与明細書、雇用契約書等に加えて事業主の証明を添付(原則として連続2回まで扶養継続可) |
| 労働契約内容による年間収入の取扱い | 基本給および諸手当等で見込まれる年間収入が130万円未満、他収入なし、主として被保険者の収入で生計維持 | 被扶養者認定時点において原則として被扶養者に該当するものとして取扱う |
| 被用者保険の適用拡大(法改正) | 短時間労働者等が被用者保険に加入できる事業所の範囲拡大 | 令和7(2025)年の年金制度改正法により被用者保険への移行を促進 |
19歳以上23歳未満の学生年代は基準が異なるのか
19歳以上23歳未満の学生年代については、扶養認定を受ける方(配偶者を除く)の年間収入要件の額が150万円未満に引き上げられています。一般的な被扶養者の収入基準である130万円未満と異なり、対象となる年代ではより高い収入水準まで扶養にとどまることが可能です。
この基準見直しは、就業調整対策等の観点から行われたものです。具体的には、19歳以上23歳未満の親族等を扶養する場合における所得税法上の特定扶養控除の要件の見直し等が行われたことを踏まえ、社会保険における被扶養者認定基準についても年間収入要件が150万円未満へと改定されました。税金面での扶養控除の枠組みについては、扶養控除の仕組みと金額でも解説されています。
この150万円未満の要件が適用されるのは「配偶者を除く」19歳以上23歳未満の親族等である点に注意が必要です。配偶者の扶養に入るパート勤務の方についてはこの150万円未満の基準は適用されず、通常の被扶養者認定基準や被用者保険の適用基準が適用されます。
大学生などの学生年代がアルバイトで働く場合、繁忙期の勤務増加などによって年収が130万円以上となったとしても、150万円未満であれば年間収入要件を満たすことができます。これにより、学生年代の就業調整を緩和し、働きやすい環境が整備されています。
事業主向けにはどのような支援策が用意されているのか
パート・アルバイトが年収の壁を意識せずに働けるよう、事業主に対してはキャリアアップ助成金などの支援制度が用意されています。国は令和5(2023)年10月より「年収の壁・支援強化パッケージ」を開始し、労働者の社会保険加入や収入増加に取り組む事業主を支援しています。
「106万円の壁」に対応するキャリアアップ助成金の「社会保険適用時処遇改善コース」は、令和8(2026)年3月31日までに短時間労働者を新たに被用者保険に適用させるとともに、収入増加の取組を行った事業主が対象となります。
令和8(2026)年4月1日以降に同様の取組を行うことを予定している事業主向けには、「短時間労働者労働時間延長支援コース」が新設されました。このコースは、労働者を新たに被用者保険に適用させるとともに、収入増加の取組を行った事業主に助成を行う制度として利用されます。
さらに、企業の配偶者手当の見直しが進むよう、見直しの手順をフローチャートで示すなど、わかりやすい資料が作成・公表されています。配偶者手当の制度設計については、税制面における配偶者控除の仕組みとも密接に関連しています。
| 支援策の名称 | 対象期間・開始時期 | 支援の主な内容と対象事業主 |
|---|---|---|
| 年収の壁・支援強化パッケージ | 令和5(2023)年10月開始 | 「年収の壁」への当面の対応策として国が推進する総合パッケージ |
| 社会保険適用時処遇改善コース(キャリアアップ助成金) | 令和8(2026)年3月31日まで | 短時間労働者を新たに被用者保険に適用させ、収入増加の取組を行った事業主が対象 |
| 短時間労働者労働時間延長支援コース(新設) | 令和8(2026)年4月1日以降 | 労働者を新たに被用者保険に適用させ、収入増加の取組を行った事業主を助成 |
| 配偶者手当見直しの支援資料 | 公表済み | 企業の配偶者手当の見直し手順をフローチャート等でわかりやすく示す資料の提供 |
パート・アルバイトが就業調整を検討する際の判断基準は何か
パート・アルバイトが就業調整を検討する際は、勤務先の厚生年金保険適用対象者数と自身の労働契約内容をまず確認することが基本となります。企業規模が従業員50人超であるか、週20時間以上勤務するか、所定内賃金が月額8.8万円以上であるかによって、直面する制度が106万円の壁であるか130万円の壁であるかが分かれます。
勤務先が従業員50人超の企業であり、週20時間以上かつ所定内賃金月額8.8万円以上で勤務する場合は、被用者保険の加入対象となります。一方で、これらの要件に該当しない場合は、年間収入が130万円以上になるかどうかが被扶養者認定の判断基準となります。
一時的な繁忙や人手不足によって年収が130万円以上となる見込みであれば、事業主の証明を活用して原則として連続2回までは被扶養者を継続することが可能です。また、労働契約上の見込み年収が130万円未満であり主として生計を維持されている状態であれば、契約内容に基づいた認定が行われます。
さらに、令和7(2025)年の年金制度改正法により、106万円の壁の賃金要件は令和7(2025)年6月から3年以内に撤廃され、企業規模要件も段階的に縮小・撤廃されることが決定しています。被用者保険の適用拡大が進む今後の制度変更を見据えて働き方を検討することが求められます。
よくある質問
106万円の壁を超えるとどのような保険に加入することになりますか?
106万円の壁の要件を満たした場合は、勤務先で厚生年金保険および健康保険(被用者保険)に加入することになります。配偶者の扶養(第3号被保険者)から外れ、自身で社会保険料を負担する形になります。
具体的には、従業員50人超の企業において週20時間以上勤務し、所定内賃金が月額8.8万円以上(年収換算で約106万円)となった場合に加入義務が発生します。
130万円の壁を超えても扶養から外れない方法はありますか?
人手不足による労働時間延長等に伴い一時的に年収が130万円以上となった場合は、事業主の証明を提出することで、原則として連続2回までは引き続き扶養に入り続けることが可能です。
毎年の被扶養者認定の際に、過去の課税証明書、給与明細書、雇用契約書などに加えて一時的な収入である旨の事業主の証明を添付することで手続きを行います。また、労働契約内容で見込まれる年間収入が130万円未満である場合も原則として被扶養者として扱われます。
106万円の壁の賃金要件はいつ撤廃される予定ですか?
所定内賃金を月額8.8万円以上とする賃金要件は、最低賃金の状況を踏まえ、令和7(2025)年6月から3年以内に撤廃される予定です。
これは令和7(2025)年の年金制度改正法において定められたものであり、あわせて従業員50人超の企業を対象とする企業規模要件についても段階的に縮小・撤廃される方針となっています。
19歳以上23歳未満の学生アルバイトの扶養基準はどうなっていますか?
扶養認定を受ける方(配偶者を除く)が19歳以上23歳未満である場合、年間収入要件の額は150万円未満に引き上げられています。
就業調整対策等の観点から、所得税法上の特定扶養控除の要件見直し等を踏まえて改定された基準であり、配偶者以外の19歳以上23歳未満の親族等に適用されます。
企業が配偶者手当を見直すための資料はありますか?
企業の配偶者手当の見直しが進むよう、見直しの手順をフローチャートで示す資料などが作成・公表されています。
配偶者手当の見直しを検討している企業は、公表されているわかりやすい資料の手順に沿って制度改定を進めることができます。
パート・アルバイトの年収の壁への対応まとめ
パート・アルバイトにおける「年収の壁」には、被用者保険への加入基準である106万円の壁と、被扶養者認定の基準である130万円の壁が存在します。106万円の壁は従業員50人超の企業で週20時間以上働き月額賃金8.8万円以上になると社会保険加入が生じる壁であり、130万円の壁は年収130万円以上で被扶養者認定が変わる壁です。
130万円の壁に対しては、人手不足等による一時的な収入増加であれば事業主の証明により原則として連続2回まで扶養を継続できる仕組みや、労働契約内容による年間収入の取扱いが導入されています。また、学生年代である19歳以上23歳未満の親族等(配偶者を除く)については、年間収入要件が150万円未満に引き上げられています。
さらに、令和7(2025)年の年金制度改正法により、106万円の壁の賃金要件は最低賃金の状況を踏まえ令和7(2025)年6月から3年以内に撤廃され、企業規模要件も段階的に縮小・撤廃される予定です。事業主向けにはキャリアアップ助成金の社会保険適用時処遇改善コース(令和8(2026)年3月31日まで)や、新設された短時間労働者労働時間延長支援コース(令和8(2026)年4月1日以降)などの支援策が用意されています。自身や職場の状況に応じた制度と今後の動向を正しく把握し、適切な働き方を選択することが大切です。
PR
税理士選びで迷ったら、無料の紹介サービスを使う手も
相性や料金が合う税理士を自分で一から探すのは大変です。希望条件を伝えるだけで、あなたに合う税理士を無料で紹介してもらえます。
相談・紹介は無料 / 全国対応 / 条件に合う税理士を提案